米vsイラン、ギリギリ「寸止め」で済んだ後始末 反米の興奮が冷めれば、また生活苦が始まる

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イラクによるイラク空軍基地へのミサイル攻撃は、アメリカへの「平手打ち」(ハメネイ師)であり、非常に抑制された攻撃で、アメリカがどう反撃するかという反応を探ったものだろう。意外なことに、好戦的な性格のトランプ大統領がイランのミサイル攻撃に対する軍事報復を見送った。

これは一見、イランにとって有利に見えるが、実際は違う。なぜなら、ソレイマニ氏という高官を殺害されたのに、イランはそれに見合う報復ができないことを意味するからだ。

この結果どうなるか。イランの体制は恥をそそぐことができず、国民の強硬派は体制に不満を持つことになる。加えて、ソレイマニ氏殺害で盛り上がった国民の団結は、興奮が冷めるにつれ、経済制裁による生活苦問題に再び関心が高まる。ハメネイ師がどうやって恥をそそげるか、これからの課題になったようだ。

国際政治は“見せ場”を作るプロレス?

一方で、イランがアメリカが引き返せないレベルの厳しい報復をしなければ、アメリカとの本格戦争には至らないということが、一連の経緯で読めてきた。

しばしば国際政治は、トランプ大統領の好きなプロレスに例えられる。シナリオ(戦略)があり、お互いに大きなケガをしない範囲で、“見せ場”を作り、観客を沸かせる。とはいえ、シーア派宗教国家のイランと、気まぐれ大統領が指導するアメリカの対決だ。

異質な競技相手でも、あくまで本格戦争にはならない範囲で、世界が注目する見せ場が続くと信じたい。それでも、アメリカ、イランともに“手打ち”が読めなくなってきており、不安は国際社会に残る。

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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