新幹線だけど在来線、「博多南線」どんな路線? "ややこしい存在"だが、通勤通学で活躍する

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もともと博多南線は、博多総合車両所周辺の地元住民からの要請で生まれた鉄道路線だ。1974年に博多総合車両所が開設した当時、周辺はほとんどが田畑の田園地帯だった。

ところが年々福岡市のベッドタウンとして宅地化が進み、福岡市内への幹線道路は大渋滞。公共交通機関は西鉄の路線バスしかなかった。そこで住民たちが目をつけたのが新幹線の回送列車だ。

国鉄からJRに移行したばかりのころに「新幹線回送列車有料乗車実現期成会」をつくり、JR西日本に要望を続けた結果、博多南線が実現。博多南線の開業によって、それまでは渋滞の中を1時間かけて福岡市内まで行っていたところ、わずか10分に短縮されたというから住民たちの喜びたるやいかばかり。利用者数は右肩上がりに増えて、いまでは朝の通勤時間帯になると座れずにデッキに立つ人もいるくらいだ。

単なる“回送列車への有料乗車”にとどまらず、博多南線内だけを走る列車も設定されるほどに成長したのである。

日中でも多くの利用者

筆者が訪れたのは平日の日中だったが、それでもかなり多くの客が博多南線に乗っており、博多行きの列車を待つ客もホーム上に数十名。老若男女さまざまで、博多南駅周辺の人たちにとって、この一風変わった路線はすっかり日常の足として定着しているようだ。

「ちなみに、博多南駅から博多駅に向かう列車もほとんどがそのまま『こだま』になるので車内清掃が必要です。博多駅ではもちろんその時間は取れないですから、博多南駅での折り返し待ちの時間を利用して清掃をしているんですよ」(津隈さん)

利用客でにぎわう博多南駅のホーム(筆者撮影)

たしかに博多南駅に到着した列車の様子を見ていると、乗客が降りた後にスタッフが乗り込んで車内清掃を行っていた。ホームで待っているお客が乗れるのは清掃が終わってからだ。こうした光景が見られるのも博多南線ならでは、である。

ともあれ、開業当初から比べると4倍近くに利用者が増えている博多南線。JR西日本としては思わぬところで“収入増”となって万々歳……と言いたいところだが、博多南線の“本分”はあくまで車両基地への引込線。利用者が増えたからといってほいほい列車を増やすこともできない。

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