2020年の北朝鮮、対話かそれとも軍事挑発か 新年の辞は発表せず、金委員長はどう動くか

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この発言は、核・ミサイル試験のモラトリアムを変える可能性を示唆したものだろう。金委員長はまた、「世界はまもなく、新たな戦略兵器を目撃するようになる」と宣言した。

しかし、金委員長は「われわれの核抑止力の強化の幅と深度は、アメリカの今後の朝鮮に対する立場によって修正されうる」とも述べ、すぐさま軍事挑発は行わないという行動の余地を残した。

とくにアメリカを非難しながらも、トランプ大統領について言及せず、非核化交渉の中断をもはっきりと宣言していない。「曖昧な戦略」を採ったという指摘が出ている。

核と経済の「並進路線」へ事実上復帰

金委員長は「制裁による、北朝鮮を封鎖するかのような策動をすべて破綻させるため、われわれは正面突破戦に邁進すべきだ」と強調した。結局、北朝鮮が交渉の期限以降に進むべき「新たな道」とは、対北制裁の長期化に合わせた自衛的な国防力強化と、経済的な自力更生のことだと考えられる。

2013年に宣言し、2019年に「達成した」とした「核武力と経済開発の並進路線」への復帰を公式に宣言したわけではないが、事実上の復帰だという指摘もある。

金委員長は2013年から毎年、肉声による新年の辞を発表してきた。全員会議の結果を報道することで新年の辞に代えたのは今回が初めてだ。

韓国・統一研究院の洪珉(ホン・ミン)北朝鮮研究室長は「新たな道の初期の局面で、今後は交渉の幅を狭めるため、曖昧な戦略を採った。2017年以前の核開発への道と、2018~2019年に交渉による制裁解除を模索したやり方とは違い、新たな道は交渉の長期化を前提とした戦略兵器の開発を進める道だと思われる」と述べた。(「ソウル新聞」2020年1月2日付)

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