ミルクボーイが「M-1史上最高」にウケた理由 松本人志絶賛!「行ったり来たり漫才」の魅力

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コーンフレークともなかは、世代を問わず多くの人が知っている身近なものでありながら、食事や菓子といった各ジャンルの中ではややマイナーな地位にあり、普段それについてじっくりと考えるようなことがないものだ。だからこそ、それらを主題として深く掘り下げることで、見る人に新鮮な驚きを与えられる。コーンフレークともなかという題材こそが、この漫才の面白さを万人に伝えるのに最適だったのだ。

ネタも技術も完成された「しゃべくり漫才」

また、ネタの面白さばかりが注目されがちだが、ミルクボーイの2人は漫才の技術も高い。純粋に会話だけで進行する「しゃべくり漫才」では、しゃべりの上手さが求められる。

内海は甲高い声でハキハキと話すので言葉が聞き取りやすい。一方の駒場は、ボディビルダーとしても活動しているほどの本格的な筋肉芸人だ。なかやまきんに君や小島よしお、オードリーの春日俊彰など、筋肉を売りにしている芸人にはどこか抜けたところのあるキャラクターの持ち主が多い。駒場もその特性を生かして、何を考えているのか分からないような妙に落ち着いた話し方で漫才を演じている。母親が忘れたものが分からなくて困っているという自然な演技をずっと貫いているので、違和感がない。

2019年の『M-1』は「史上最もレベルが高かった」と言われている。実際、かまいたちや和牛の技術の粋を尽くしたようなスキのない漫才は圧巻だったし、新しいツッコミの手法を提示したぺこぱの漫才も衝撃的だった。それ以外のファイナリストもそれぞれに持ち味を出して大きな笑いを取っていた。

ただ、そんな中で、ミルクボーイの漫才は頭一つ抜けた大きな笑いを取っていた。刀でスパッと斬るような技巧的な漫才ではなく、鈍器で力任せに殴りつけるような破壊力抜群の漫才だった。ミルクボーイは道なき道を暴走する「行ったり来たり漫才」でその名を歴史に刻んだ。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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