上場宣言のエアクロ、「アパレル革命」へ新機軸 顧客の「生の声」を分析、データ提供も視野

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エアクロは会社の業績を公表していないが、投資負担により通期赤字が続いている。ただ、主力のエアクロ事業は年々拡大しており、同事業の2019年6月期の売上高は前期比6割増の15億円強だった。月額会員数の増加に伴い、2019年には初めて単月黒字化を実現した。

2019年末には、要望の多かった大きいサイズ(L~3L)専用のプランも追加された(写真:エアークローゼット)

2019年末には、一定の顧客需要の見通しが立ったことや商品の仕入れ先であるブランド側の協力を受け、以前から要望の多かった大きいサイズ専用のレンタルプランも始動。将来的に小さいサイズ専用プランの展開も視野に入れている。

当然、さらなる拡大や収益化に向けては、より幅広い層への認知度向上や短期での退会率の低減などの課題は多い。それでもアパレル不況が叫ばれる中でのエアクロの成長は、大量生産・大量販売を主軸としてきたアパレルのビジネスモデルが転換期に入りつつあることを意味している。

プロが選んだ服で、新たな出会いを創出

エアクロのサービスは、顧客一人ひとりの需要に沿った提案を行うことを特徴のひとつとしている。基本プランでは、会員が登録した体型データや好みの色・テイストに合わせて、300以上のブランドの中からプロのスタイリストが選んだ服3点を一度の配送で届けている。

利用者側がコーディネートを考える手間を省き、自分では選ばなかったような服との出会いを創出する狙いだ。中には「似合わなかった」とすぐに返却されるケースもあるが、「この色合いの服は普段買わないけど着てみたらよかった」などと、新たな発見を喜ぶ声が多く寄せられているという。

長引くアパレル不況の背景には、コト消費の台頭などでファッションへの家計支出が相対的に減ったことや、価値観が多様化する中でトレンドが細分化したことが挙げられる。老若男女問わず、服を買うためだけに店舗へ足を運ぶ回数は減少。大量に生産した流行の商品を店頭に並べて購買を促す手法は通用しづらくなり、こうした時代の変化に多くのアパレル企業が対応しきれず苦慮している。

それに対し、個々人の嗜好を分析して最適な商品を提案するエアクロのサービスは、時間をかけずにファッションを楽しみたい現代人の生活スタイルに合致したものでもあった。

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