山田洋次監督、「寅さんと鉄道」を語り尽くす 満男が「新幹線」に乗るのは理由がある
――鉄道でここはどうしても撮っておきたいと思われた路線は?
そう思って撮ったのは、寅さんじゃないけど、『遥かなる山の呼び声』(1980年)の上武佐駅という標津線の駅でしたね。高倉健さんが自分の兄貴と2人で会う場面。最初の場面もそうだったな。倍賞千恵子さんが息子と別れたあと、もう列車がないので、線路をぶらぶら歩いていくシーン。内地の線路と違いますからね、平野の向こうまで線路が真っすぐ延びていく。この線路はそう遠くないうちに廃止になると聞いて、残念だなと思いながら撮りました。
――今、C61の映画を撮られています(注)。
映画じゃなく、まずはテレビの番組としてです。いきなり劇場用のドキュメンタリー映画では難しいですからね。これの動機というのは、今、全国各地で野外にSLが展示してありますね。それをリニューアルして走らせる過程を追ったドキュメンタリーは結構作られていますが、肝心なところを見せてくれない。僕なんかは、見ているとどうも隔靴搔痒といいますか、何でそこをもっとちゃんと映さないんだと。
今回たまたま、群馬県伊勢崎市の公園に保存してあったC61をリニューアルするという情報が入りまして、だったら僕にそれを撮らせてくれないかと。納得のいくドキュメンタリーを作るからと提案したら、ぜひやってくださいということになってね。僕がこだわるのは、心臓部のシリンダーとピストンの連動で機関車が動くところ。その構造を、男の子ならみんな食いついて見るようなドキュメンタリーを作りたい。
最終的には、完成したC61の日本でいちばん大きい、直径1m75cmの動輪が上越線を走るというところでおしまいになる。だけど、ピストンや動輪なんて、みんな手抜きで映しますからね。道路からぱあっと映しますでしょう。あれじゃ物足りない。僕が今何とかしたいのは、カメラを据え付けて、それでピストンが動くのをたっぷり見せたいんです。カメラを据え付ける交渉を一生懸命やっています。品のない言い方ですが、SLファンならちびりそうなショット、そういうショットを撮りますよ。
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