山田洋次監督、「寅さんと鉄道」を語り尽くす 満男が「新幹線」に乗るのは理由がある
機関士にあこがれる鉄道少年だった
――山田監督が鉄道にこだわる理由は何ですか。
僕らの少年時代は、男の子はほとんどが機関士にあこがれていました。僕もご多分に漏れず機関士にあこがれる鉄道少年だった。しかも父親が満鉄の蒸気機関車(SL)の技術者でしたから、よく機関車を見せてほしいとねだっては、機関区に行って、実際の運転室に入ってみたり。
その中でも、「特急あじあ」は機関車の中でもエリート中のエリートですから。流線形でものすごく格好いいカバーが付いている。ぜいたくな列車でした。あの時代にもうエアコンディションが付いていて窓が開かない。それにスピードが速い。動輪の直径が2mですからね。今のC61が1m75cm。さらに25cm大きい。
――『男はつらいよ 望郷篇』(1970年)には、いろいろなSLが出てきます。監督がこの機関車をご指名されたのですか。
そうではないです。でも(撮影の)数年後にSLが消えるというときだからせめて、ちゃんと映そうと思った。小樽築港機関区の現場の人たちは寅さんにSLが出るという話を聞いて、「喜んで協力しましょう、貨物列車を編成しましょう」と申し出てくれた。何日も何日も同じ時間帯を走ってくれたんですよ。外からも撮ったし、中からも撮った。
最初の日にSLを待っていたんですよ。そうしたら、小樽のほうから貨物を引っ張ってやってきたのが、デコイチの流線形の……。
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