山田洋次監督、「寅さんと鉄道」を語り尽くす 満男が「新幹線」に乗るのは理由がある

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鉄道について熱く語る山田洋次監督(2010年5月、撮影:吉野純治)
シリーズ50作目となる『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開されました。メガホンを撮った山田洋次監督は、実は鉄道ファンでもあり、男はつらいよシリーズをはじめ、数々の山田作品に鉄道の名シーンが登場します。2010年5月、寅さんに関する著書を持つ鉄道写真家の南正時さんが山田監督へのインタビューを行いました。約10年たった今でも、山田監督が映画に込めた鉄道への熱い思いがインタビューから伝わってきます。週刊東洋経済臨時増刊『鉄道完全解明』(2010年6月30日発売)に掲載された記事を、一部加筆修正の上再録します。

機関士にあこがれる鉄道少年だった

――山田監督が鉄道にこだわる理由は何ですか。

僕らの少年時代は、男の子はほとんどが機関士にあこがれていました。僕もご多分に漏れず機関士にあこがれる鉄道少年だった。しかも父親が満鉄の蒸気機関車(SL)の技術者でしたから、よく機関車を見せてほしいとねだっては、機関区に行って、実際の運転室に入ってみたり。

その中でも、「特急あじあ」は機関車の中でもエリート中のエリートですから。流線形でものすごく格好いいカバーが付いている。ぜいたくな列車でした。あの時代にもうエアコンディションが付いていて窓が開かない。それにスピードが速い。動輪の直径が2mですからね。今のC61が1m75cm。さらに25cm大きい。

――『男はつらいよ 望郷篇』(1970年)には、いろいろなSLが出てきます。監督がこの機関車をご指名されたのですか。

そうではないです。でも(撮影の)数年後にSLが消えるというときだからせめて、ちゃんと映そうと思った。小樽築港機関区の現場の人たちは寅さんにSLが出るという話を聞いて、「喜んで協力しましょう、貨物列車を編成しましょう」と申し出てくれた。何日も何日も同じ時間帯を走ってくれたんですよ。外からも撮ったし、中からも撮った。

最初の日にSLを待っていたんですよ。そうしたら、小樽のほうから貨物を引っ張ってやってきたのが、デコイチの流線形の……。

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