伊藤詩織さんの「勝訴」になぜ世界は騒ぐのか

日本人に感じる当事者意識の低さ

事実、今回の見事な勝利の後でさえ、伊藤氏は自身の国においてはまるで追放された人であるかのようだ。彼女が手がける仕事のほとんどは海外向けで、他国における女性問題を取材することに自身の時間を費やしている。

筆者が知る限り、伊藤氏は女性の日本の政治家からも大きな支援は受けてこなかった。判決が出された夜、立憲民主党の参議院議員田島麻衣子は、筆者も参加した集会に参加した唯一の政治家だった。伊藤氏の戦いはすべての日本の女性に関わることなのに。

伊藤氏の例は、性被害を受けたり、セクシャルハラスメントにあっているすべての日本人に勇気を与えるものだ。伊藤氏の戦いで重要なのは、彼女が「恥の負担」を変えたことである。恥ずべきは、被害者でなく、加害者である、と。

なぜ世界が注目するのか

伊藤氏の裁判が世界的に注目された理由は、起訴内容が揺るぎないものだからでもある。過去2年間にわたり、伊藤氏はその夜に何が起こったのかの供述において一貫性を示してきた。山口氏側の弁護団は、伊藤氏を嘘つきとか情緒不安定な女性として描写しようとしてきたが、伊藤氏の供述には重大な欠陥があると指摘することができなかった。

その夜に起こったことを証言して伊藤氏を支援しようという証人も何人か現れた。そのなかには、レイプが行われたとするホテルのドアマンもいる。このドアマンは、自分の仕事や評判にリスクが及ぶことを承知で、自分自身の目で見たことを供述しようと、伊藤氏の弁護団に連絡してきたのである。

伊藤氏の戦いに世界の関心が集まるより大きな理由は、彼女が自らの事件を日本における性犯罪をめぐる法的及び社会的状況を改善することを目的に用い、これを裁判所が認めたことである。伊藤氏は、「誰もが(性被害の)被害者、加害者、傍観者にならないよう考えなければならない」と訴え続けている。

さらに同氏は、性暴力の問題に集団的に取り組む方法も示している。伊藤氏が望んでいるのは、どちらか片方の性がもう片方の性を責めるのではなく、あらゆる人を巻き込んだ議論だ。実際、伊藤氏は山口氏に対して恨みは抱いてないと語っている。求めているのは復讐ではなく、正義だけだ、と。

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