街中に続々登場「シェアサイクル」の大きな課題 自転車活用が進む中国・台湾から見る今後

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そして具体的な施策としてシェアサイクル関連では「シェアサイクルと公共交通機関との接続強化や、サイクルポートの設置促進等により、シェアサイクルの普及を促進する」とともに、「社会実験等を踏まえて、駐輪場やシェアサイクルの運営、放置自転車対策等の効率化に向けて自転車のIoT化を促進する」としている。

つまり、国としては自転車を人々が幸せに生活するためのツールの1つとして活用していこうということだ。そしてシェアサイクルについてはIoTを活用しながら鉄道やバスといった公共交通機関との接続強化をはじめとしたまちづくりと連携を図るとしている。すると、今後のシェアサイクル活性化、ひいては自転車活用推進のためにすることも見えてくるはずだ。

社会インフラの1つとして捉え実装すべき

ここまで、海外の状況も見ながらシェアサイクルの現状や国の方針を見てきた。では、今後日本におけるシェアサイクルはどうあるべきなのだろうか。

まず、今後日本では違法駐輪の防止や環境負荷の低減を行いつつ、QOLの向上に資する自転車活用をしていくことになる。そのためにはもちろん自転車道整備をはじめとした走行環境改善や各地で課題となっている自転車の走行マナー問題の解決も重要になるが、シェアサイクルを普及させることもかなり重要な施策となることは間違いない。

また昨今、MaaS(Mobility as a Service)という概念が日本で広がりつつあり、移動手段の組み合わせで賢く移動できるようにしようという機運が盛り上がっている。中でも起点や目的地から駅やバス停までの「ラストワンマイル」と呼ばれる区間の移動手段整備についてはさまざまな角度から議論されている。

もちろん今後の社会実装において具体的な方向は検討や議論が必要なところが多いが、スペースを取らず環境負荷も低いシェアサイクルはかなり期待できる交通機関であることは間違いない。

これまでシェアサイクルはビジネスの1つという観点で捉えられてきた側面が強かった。しかし、これからは「まち」を構成する社会インフラの1つとして捉え実装するべきだろう。その先にこそ、今後のシェアサイクル事業の未来だけではなく、まちづくりや持続可能な社会づくりが見えてくるに違いない。

鳴海 侑 まち探訪家

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なるみ ゆう / Yu Narumi

1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やX(旧・Twitter、https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。

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