鉄道の常識変える?JR西「運転士にサングラス」 西日や朝日のまぶしさ抑え信号の視認性向上

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車両の運転席には日差し対策としてサンバイザーが備えられているが、カーブ通過時や列車が進む方角が変わるごとに調整し直さなくてはならなかったり、姿勢を変える必要があったりと運転士の負担になっていた。車両側の対策では限界があるため、運転士が身に付けるものでの改善策に目を向けたわけだ。

運転席に備え付けのサンバイザーでは日差し対策に限界がある場合も(記者撮影)

運転士の経験がある同社社員は「太陽がまぶしいと目を細めなくてはいけないので疲れの原因になっていた。当時はサングラスを導入することになるとは思っておらず、ものすごくいい話だ」と歓迎する。

関東のある大手私鉄の運転士経験者も「太陽の位置が低い冬などはサンバイザーで対応しきれないこともある。乗務環境を改善する取り組みで、サングラス導入をいいなと思う運転士はウチにもいるだろう」と話す。

ほかの鉄道にも広がるか?

今年9月にサングラスの試行実施について報道発表したときには、威圧感を与えるのではないか、との懸念が利用者のごく一部からはあったとみられるが、実際に試行を始めてからはとくに否定的な声はないようだ。金丸課長も「安全のための着用なのでご理解いただきたい」と強調する。

サングラス着用は運転中に限って認める(写真:JR西日本)

ほかの運輸業界に目を向けると、雲の上で強い日光にさらされる飛行機のコクピットではサングラスは必需品だ。

ただし計器類の表示が見えにくくなるため偏光レンズは使わない。「靴と同じように、自分に合うものを選んで購入している」(大手航空会社のパイロット)という。操縦士がサングラスを付けて乗務することに違和感を覚える利用者はいないだろう。

鉄道業界は接客業であることを意識するあまり、運転士のサングラス着用に及び腰のようにみえる。JR西日本は、在来線に本格導入すれば「大多数の運転士が貸与を希望することになりそうだ」とみている。

同社での導入をきっかけに、ほかの鉄道事業者にも動きは広がるのか。リスクの芽を少しずつ摘み取り、鉄道がより安全な移動手段となっていくためには、利用者一人ひとりの理解が不可欠だ。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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