鉄道の常識変える?JR西「運転士にサングラス」 西日や朝日のまぶしさ抑え信号の視認性向上
試行にあたっては、近畿エリアの在来線運転士のうち、年齢や性別、メガネ着用の有無に考慮して約75人を選んだ。対象は大動脈の東海道本線が通る京都・大阪・神戸の各支社(草津・大阪・明石)のほか、紀勢本線を担当する紀伊田辺運転区、雪の照り返しも想定して豊岡列車区の運転士を加えた。前方にある信号の視認性向上がいちばんの目的のため、車内信号式の新幹線の運転士は試行の対象としていない。
もともと同社では、身だしなみについて決めた接客サービスマニュアルで、色が付いたメガネを認めていなかった。また、個人で購入したサングラスを着用すると、運転士の資格について国が定めた「動力車操縦者運転免許に関する省令(動免省令)」の視機能の基準を満たせなくなるおそれがある。
試行の際もサングラスは運転中にのみ着用することとし、駅のホームなどで利用者に対応するときは外すよう指導している。雨や曇りの日、トンネル走行中の使用も、まぶしさを軽減するという本来の目的ではないので禁止だ。
運転士とは別に、現場を巡回する保線の社員に対しても貸与する。
導入検討の背景
同社によると、サングラスの導入は2018年の9月ごろから検討を始めた。だが、太陽光がまぶしいのは今に始まった話ではないし、サングラスにしても発明されたばかりのツールではない。ここにきて同社が導入に向けた試行に踏み切った背景は何なのか。
JR西日本鉄道本部運輸部の金丸直史運転士課長は「2005年の福知山線脱線事故以降、なにがリスクかをいちばん理解している現場の乗務員から意見を吸い上げ、真摯に向き合う風土がかなり醸成してきた」と説明する。
運転士同士でも、例えば夏場には「○○のカーブの樹木が生え茂って信号機が見えにくい」といった情報を積極的に共有するなど、リスク管理への意識がより高まっているという。
そのうえで金丸課長は「お客さまの命を守る信号なので、その視認性を阻害するものは何か、といま一度洗い出してみると、西日や朝日の問題があった。調査したところ運転士の資格条件を阻害しないサングラスがあることがわかったので導入を検討した」と明かす。
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