ANA、「羽田国際線増便」でも表情が冴えない理由 米中貿易摩擦が逆風、中計目標達成に黄信号
世界の空で繰り広げてきた快進撃は本当に続くのかーー。
ANAホールディングスは11月、傘下の全日本空輸が2020年3月以降に羽田空港を発着する国際線の運航便数を、1日あたり最大14便増やすと発表した。直近の時刻表通りに路線が維持されれば、全日空の羽田国際線は4割増えて1日49便となる。
深圳、イスタンブールなどへ初就航
成田空港と比べて羽田は都心へのアクセスで勝り、航空各社の国際線の開設や増便に関する要望が相次いでいる。国土交通省も世界から東京へのアクセス向上を図るべく都心上空の空路を見直し、2020年から混雑時間帯の発着枠を拡大。計50便分が増枠され、国土交通省は全日本空輸に13.5便分(0.5便は片道分で深夜早朝枠と組み合わせ)を配分した。
これにより、全日空はロサンゼルス線の増便やサンフランシスコ線の新規開設などでアメリカ路線を計6便追加。中国・深圳やトルコのイスタンブール、スウェーデンのストックホルムなど、日系航空会社としては初めて就航する路線も開設する。
出張需要が大きく、年間を通して高い単価と搭乗率が期待される羽田便の充実は経営の安定性を高める。また、路線網が拡大すると利便性も向上し、マイル会員の囲い込み効果も期待される。しかし、ANA経営陣が12月の定例記者会見でにじませたのは、意外にも強い危機感だった。
理由は2020年3月期の業績予想を下方修正したことにある。売上高は当初予想の2兆1500億円から2兆0900億円(前期比1.5%増)、営業利益は1650億円から1400億円(同15.2%減)と減益予想に修正した。ANAにとって営業利益予想の下方修正は、系列LCC(格安航空会社)の業績低迷や円安による燃油費増加が重なった2014年3月期の中間決算以来のことだ。片野坂真哉社長は「当面の状況は厳しく、注視していきたい」と厳しい表情を浮かべた。
【2019年12月23日19時12分追記】初出時の記事で片野坂社長の名前が誤っていました。表記のように修正いたします。
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