ANA、「羽田国際線増便」でも表情が冴えない理由 米中貿易摩擦が逆風、中計目標達成に黄信号
ANAは貨物専用機と旅客機の貨物室を組み合わせて大量輸送を担っている。一方、日本航空は2010年の経営破綻を機に、大量輸送はかなわなくても機材の追加購入・維持費がかからない貨物室での輸送に事業を一本化。そのため、日本航空の2019年3月期における貨物事業の売上高は1000億円とANAより小さいが、収益の変動も小さい。今回は日本航空の慎重な戦略に軍配が上がった格好だ。
運賃値下げで経営改善を急ぐ
ANAは経営改善を急いでいる。国際線は、北米路線で運賃を値下げし、アジア諸国との三国間乗り継ぎ需要の獲得を狙う。
【2019年12月22日9時1分追記】初出時の中見出しを修正いたします。
欧州路線ではプロモーションを強化して訪日需要の取り込みを図るなど、発着両地域の需要動向に応じた柔軟なマーケティングで難局を打破しようとしている。LCCも2019年11月に2社あったLCCをピーチ・アビエーションへ統合し、運航効率を引き上げている最中だ。
問題は、今回の羽田路線拡大を見越して作成した、2021年3月期に売上高2兆3000億円、営業利益2000億円を達成するという中期経営目標の現実味だ。
ANAは2020年3月からの路線拡大に合わせ、パイロットや客室乗務員などの採用を増やしている。そして、羽田空港そばにある研修施設「ANAブルーベース」の新設に400億円を投じるなど大規模な先行投資を行ってきた。
足元で各事業の需要が弱含む中、2021年3月期に営業利益2000億円を達成するには、2020年3月期比で600億円もの利益を積み増さなければならない。ANAの片野坂真哉社長は13日の会見で「中期経営計画で構えた数字を精査している。意外と国内線が健闘しているものの、(米中の)関税合戦による影響が続くようであれば、貨物の生産量を調整せざるを得ない」と述べ、営業利益2000億円の達成が厳しいことをにじませた。
2010年に経営破綻した日本航空が成長戦略を規制される姿をしり目に、ANAはここ数年事業を急速に拡大し、国内最大手の航空会社へと躍り出た。羽田線を充実させ、世界的大手に名を連ねる出発点としたい2020年、急成長の反動が出る事態は何としてでも避けたいはず。業界首位へのし上がる間に獲得した運航便数や機材規模の調整、客層に応じた柔軟な運賃設定などのノウハウをうまく生かせるか、航空会社としての腕前が試されている。
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