乗り味のよさで快走、ヤマハの電動自転車 低価格の輸入品流入も、どこ吹く風

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ヤマハ発動機の電動アシスト自転車が好調だ。2013年は国内総需要が43.5万台と12%増(前年比、以下同)だったのに対し、ヤマハの「PAS」は13.1万台と26%伸び、過去最高を記録した。

また、ブリヂストン向けなど電動アシストユニット供給分を含めた国内シェアは50%と、こちらも過去最高となった。2015年に50%のシェア達成を中期目標に掲げていたが、前倒しで達成したことから、目標シェアを55%に上方修正した。

14年は国内総需要を46.7万台(7%増)と想定。その中で、PASは14.4万台(10%増)の販売を計画している。輸出分を含むPASと電動アシストユニット全体では、28.1万台(21%増)の販売を目指す。

性能の違いでシェア挽回

電動アシスト自転車市場では、低価格の輸入品が流入し、国内勢が苦戦した時期があった。ヤマハは低価格路線と一線を画し、性能と品質で勝負する方針だ。

事業開発本部の森本実・SPV事業部長は、「部品を調達して電動アシスト自転車を作ることは簡単だが、スムーズかつパワフルにアシストする制御システムなど、乗り味をよくするには技術力が要る。低価格輸入品との性能の違いが認識され、シェアを挽回している」と自信を見せる。

とはいえ、今年4月には消費増税が控えており、個人消費へのマイナスを指摘する声もある。これに対し、森本事業部長は「電動アシスト自転車はまだ8割が新規顧客。購買層も、シニアや子育て主婦中心から、通勤通学用途に広がっている」と強調。品ぞろえを増やすことであらゆる層に、これまで以上にアピールすることを狙う。

また、実用的な用途だけでなく、娯楽用途にも可能性があると見る。昨年の東京モーターショーに参考出品した「YPJ-01 イプシロンプロジェクトゼロワン」は、外装22段変速のロードレーサー自転車に、小型軽量のアシストユニットを搭載している。ほとんどの場合はスポーツ自転車として利用し、素早い加速をしたいときや坂道などだけでアシストを使うことを想定。疲労軽減よりも爽快な走行感を念頭に置いている。コンセプトモデルながら反響は想定以上。ヤマハでは、15年以降の商品化を目指す。

現在、自転車の電動アシスト化率はまだ5%程度だが、中長期的には「15~20%も十分可能」と森本事業部長は力を込める。

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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