危うい「日本人の読解力」を根本的に変えるコツ

塾も具体的な方法は教えてくれない

この場合、

①催しもので生花を販売できなかったことによる損害は、「普通は生じる(普通はそうなる)」ものですから、因果関係はアリ、つまり○です。
②雑貨店Aが、普段扱ってない生花を販売するので特別にアルバイトを雇いました。生花店Bもこの事を知っていた場合のアルバイトの給料。
これも生花店Bのミスから「普通は生じる(普通はそうなる)」損害ですから、因果関係はアリ、つまり○です。
③生花店Bのミスで雑貨店Aの評判が下がり、1年後に雑貨店Aが廃業に追い込まれた場合の雑貨店Aの損害。
これは、「そういう場合もあるかもね」という事情による損害ですので、因果関係は△となります。
※話を単純化するため厳密な法律論には基づいていません。あらかじめご了承ください。

選択肢のレベルも、このように判断することができます。

本文に書いてあるなら○、本文からすぐに思い浮かぶ(普通はそうなる、と言える)なら○、そうとも言える程度なら△、本文と合わないなら×となります。

○と△の境目がわかりにくくなった場合には、この因果関係を思い出してみてください。

「例外を認めない」言い方には用心する

選択式問題によく紛れ込んでいる「怪しい言葉」というものがあります。それが次に示した、「絶対に」「すべて」「必ず」「まったく~ない」「少しも~ない」「完全に」「~ばかり」「つねに」などの言葉です。これらの「例外を認めない」言い方が選択肢に出てきたら、△をつけて用心します。

「占いは絶対に当たることはない」「すべての占いは、信じるに値しない」「占いには、少しも存在価値がない」
『全教科対応! 読める・わかる・解ける 超読解力』(かんき出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

親御さんが受験生のころは、このような言葉が選択肢に出てきた場合は、大抵が×でした。しかし、塾側が「このような言葉が出てきたら×」というように教え始めたために、学校側も対策を打ってくるようになりました。現在では、このような選択肢が正解になることもあるため、私は△をつけて用心させるようにしています。

そして、実はこの「例外を認めない言い方」を知ることは、生きていくうえでもとても重要なことです。

ジャーナリストの江川紹子さんは、「その違和感を大切にしよう〜オウム事件の悲劇をくり返さないために」という文章で、地下鉄サリン事件で実行犯の運転手役を担い服役中の杉本繁郎受刑囚の手記を紹介しています。これは江川氏の「オウム事件を知らない世代に伝えたいこと、考えてもらいたいことはないか」との質問に、杉本受刑囚が答えたものです。その中に次のような1節があります。

「重要なことは、彼らが本来は断定したり断言したりできないことを断定・断言していないかどうか注意することです。自分の主張や自分が尊敬する人の思想や認識が絶対正しいかのように断言し、ほかの人の主張や思想、認識などをすべて否定するなどしていないかどうか。真理や正義などのキーワードを巧みに使いながら、自分の宗教思想や世界観などがどんなに素晴らしいかを語り、皆さんに同調させようとしていないかどうか。そうしたことに注意してください」
(江川紹子「その違和感を大切しよう〜オウム事件の悲劇をくり返さないために」〈Yahoo! ニュース〉より)

私たちが生きる現実世界も、実はこのような「怪しい言葉」であふれています。それに気がつき、心のなかで△をつけることができる力は、危険を回避し、自分が真に望む人生を送るために必要な能力でもあるのです。

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