米中合意が来年にずれたら株価はどうなるのか 対中追加関税発動の15日を前に神経質な展開

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さて今週は、主要国の株価にとっては、材料が多い。FOMC(米連邦公開市場委員会)やECB(欧州中央銀行)会合、アメリカの議会下院における弾劾の動き、同国の小売売上高、日本の景気ウォッチャー調査や日銀短観、イギリスの総選挙などだ。ただそれらの材料よりも、市場に波乱を引き起こしそうなのは、やはり米中部分合意に関する通商交渉だろう。

前述のロス商務長官の発言は、たまたま、とか、思いつき、ではない。FOXテレビのインタビューに加えて、3日(火)にCNBCテレビに対しても「15日までに合意できなければ関税を引き上げる」、との同趣旨の発言を行なっている。また、ラリー・クドローNEC(国家経済会議)委員長(対中穏健派とみられている)も、6日(金)のブルームバーグテレビのインタビューで、米中間でほぼ24時間体制で詰めの協議を行なっていると述べつつも、「12月15日は非常に重要な日」「合意がまとまらない場合、現行法に基づき関税は復活する」と語っている。ここまで主要閣僚が発言しているということは、政権内で「こうした形で表立って中国に圧力をかける」という点で、合意がなされているのだろう。

日本株も下振れの懸念がある

最終的に部分合意がどういう展開をみせるか、という肝心の点だが、筆者が独自取材して得られた情報では、細部において米中間の隔たりがまだ大きいため、合意はどうやら来年になりそうだ(1月中、中国の旧正月の前)と聞いている。

では15日に追加関税が発動されるかと言えば、それが景況感や市場に与える影響が大きいため、たとえば1カ月ほど関税発動を延期する、と米政権が表明する展開になると予想している。

ただ、交渉事においては、交渉の過程で話が思いもかけない方向に展開し、誰も望まない結果になることはよくある。米政権内でも考え方は一枚岩ではなく、たとえば対中強硬派が「とりあえず関税を引き上げておいて、部分合意が成ったら撤回すればよい」と主張し、そちらに話が転ぶことは否定できない。あるいは、筆者の予想通り、最終的に関税引き上げが大幅に延期されるとしても、その発表が遅れれば遅れるほど、15日が迫って市場が不安にとらわれる、という展開はあるだろう。

このため、今週の国内株価動向は、週明け月曜日の滑り出しは、先週末のアメリカの雇用統計を受けて株価が上振れして始まりそうだが、徐々に追加関税発動の有無を巡る不安心理からアメリカの株価や米ドル相場が下振れすることに巻き込まれ、日本株も下振れする恐れが強まっていくと懸念する。もちろん、そうした懸念が実現せず、筆者が考えているように、とりあえず追加関税が先送りされれば(そしてそうした先送りの決定が一日でも早くなされれば)株価下振れの恐れは小さいものとなる。

株価が大きく下落する前に、米政権が関税先送りを公表する、というシナリオを前提に、今週の日経平均株価は、2万3000~2万3600円を予想する。不幸にして、米中部分合意の展開が悲観的な方向に向かった場合は、さらなる下値を想定すべきことになる。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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