ソフトバンクが抱える「財務」最大のリスク要因 借り入れを生かす戦略が逆回転しかねない
ソフトバンクグループはソフトバンク・ビジョン・ファンドを運用していますが、その投資成果を測る重要な指標がIRR(内部収益率:投資額の現在価値と将来得られるであろうキャッシュフローの現在価値が同額となる割引率)です。そして、IRRを高める手法の1つが「借り入れを用いる」こと、つまりレバレッジです。
「レバレッジ」は、「レバー(lever)=テコ」で動かすという意味を持ち、「小さな作用で大きな効果をもたらす」現象に対して広く使われています。
ビジネス分野では、「営業レバレッジ」「生産レバレッジ」「マーケティング・レバレッジ」などがあります。日本テレコムやボーダフォン日本法人の買収では「レバレッジド・バイアウト」が使われましたが、これは「テコを利かせた(レバレッジをかけた)買収」、つまり「借り入れをすることによって、少ない自己資金で買収をする」という手法です。
ソフトバンクグループは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどの投資事業においても、これまでの成長を支えてきた強みである金融財務戦略にしたがって、他人資本を借り入れることによってレバレッジを利かせたM&Aや投資を行っています。つまり、投資効率や収益性を高めるための「正のレバレッジ」を利かせる金融財務戦略が要にあるのです。
レバレッジが反転して「逆レバレッジ」として作用する
しかし、その一方で、レバレッジには「逆レバレッジ(負のレバレッジ)」もあります。レバレッジが反転して「逆レバレッジ」として作用することが、金融財務戦略でレバレッジを多用してきているソフトバンクグループ最大のリスク要因になりうるといっても過言ではありません。
ソフトバンクグループがグループ全体で91.5億ドルを投資していたウィーワークの新規株式公開(IPO)延期に際して「ウィーワーク問題」が顕在化していますが、ウィーワークの事業や業績に疑念がもたれると、他の投資先も同様の目で見られ、負の連鎖が起きる可能性があります。
ウィーワークとほかの投資先に事業上の関連はないのですが、投資家や金融機関は「他の投資先は大丈夫だろうか」という疑いの目で、より厳しく見るようになり、懸念がどんどん広がっていくのです。
こうして、最終的には赤字や損失が連鎖して、一気に拡大してしまうことや問題が多様化・複雑化してしまうことを「逆レバレッジ(負のレバレッジ)」と呼びます。詳しくは下図にまとめました。
(編集部註:外部配信先では図を全部閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
最初は、金融財務戦略における「レバレッジをかける」ための借り入れ問題だけだったのが、コーポレートガバナンスやコンプライアンスの問題にまで広がり、さらには別のさまざまな問題も引き起こすなど、ネガティブなことが連鎖してしまうのです。
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