日本人の給料がまるで上がらない決定的な要因 国際的に見ても、もはや競争力を失っている

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拙著『日本人の給料はなぜこんなに安いのか』でも詳しく解説しているが、日本の給料は海外と比較しても低い。為替を加味しても、製造業のエンジニアや管理職、サービス業のスタッフなどもおしなべて、欧米の主要国の中で劣るのだ。

もちろん新興国と比べると高いとはいえ、日本人はもはや国際的に「安い人たち」になっている。日本人の給料は先進国との比較では、決して高いとは言えないどころか、むしろ低い位置にある。

理由はなんだろうか。

理由①:日本の社会は「製造業」がベースにある

工場のラインに天才的な組立作業員がいて、「その人がいなくなったら生産が止まってしまう」となってしまえば、その製造業者は困ってしまう。

だから製造業では「標準化」や、作業員の「代替性」が重要となってきた。全社一丸となって製品を作り、個性というより、チームの力が必要だ。

ただ、逆に言えば、誰かが天才的な能力を持っていても、あくまで全員で製品を作り上げるため、会社がその個人の給与のみを上げたい動機もなくなる。よくも悪くも、平等主義が蔓延する。日本は製造業で国を大きくしてきた。日本は雇用について、この製造業のスタイルがベースにある。

日本の土台を支えてきた製造業で、終身雇用ならびに安定した雇用が実現できていたことは決して無意味ではない。むしろプラスの面が多い。

例えば海外の顧客がいるとする。日本を含む、多くの国のうち、どこからか商品を調達することを検討しているとしよう。

このとき日本の会社が「うちの国では、いったん企業に就職したら、ずっと同じところで働いています。安心して働いてもらえるように、雇用を保証しています。その代わりに、給料は低く抑えられていますから、商品のコストも低く抑えています。だから、商品の価格も安いです。さらに社員は長期雇用による愛社精神から、不良品が出ないように、自分たちの責任として生産ラインを考えてくれています。ですから品質も優れています」

と言ったとしたらどうだろう。

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