日本人の給料がまるで上がらない決定的な要因 国際的に見ても、もはや競争力を失っている

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今の日本は、この流動性の低さにがんじがらめになっている。例えば、会社がある新規事業に舵を切るとする。会社は、それに合った社員を集める。しかし、その事業が失敗だとわかって撤退を決めたときであっても、社員の雇用を守らないといけないとなると、かなりの負担だ。

給料は自分よりもらっているけれど働かないおじさまたちは、こうやって量産される。日本では、35歳から54歳までの男性が、入社からずっと同一企業で働く率が、先進国の中でも上位にある。これは前述の製造業のスタイルが根底にあるからだともいえる。

日本は「転職しない」「辞めない」「クビにならない」という、基本的に雇用の流動性が低い国だ。転職しても管理職になれるケースが少ないことも、流動性を下げる一因になっている。そうなると給料はおのずと安くなりがちだ。

ではどうすればいいか問題

もし「給料が安い」「給料を上げたい」と思うなら、「転職」か「独立」、あるいは「副業」を考えることになる。

稼げる可能性は、独立>転職>副業だが、リスクも、独立>転職>副業だ。あとは個々人の嗜好による。

私は独立したいと相談されたら、「やめたほうがいいよ」とアドバイスをする。そうアドバイスされただけで踏みとどまるのであれば、独立なんてやめたほうがいいと思うからだ。私のこのアドバイスだけで、将来の不確実性にビビるくらいなら、たぶん成功しない。

『日本人の給料はなぜこんなに安いのか』(SB新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ただ、本当に悩んでいるのであれば、転職でも独立でも、まずはやってみることを勧めたい。なぜなら、日本はリスクとリターンが歪んでいるからだ。失敗しても生活保護や再就職支援などもあって、日本ではそう簡単に死ぬほどまで追い込まれない=リスクが実は少ない国だ。だから成功したら、それこそ儲けもの。腹を決めて決断することを私は勧める。

ただ当然ながら、仕事は給料の額だけで決まるものではない。確かに日本の給料は諸外国に比べて安い。しかしその裏には、諸外国に比べればまだまだ安定的な雇用という安心感がある。何を重要視し、何を選択するか。すべては個々人の判断次第だ。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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