ELTいっくんが「いい人に見える」深いワケ 音楽界の中間管理職、仕事を語る
そう思っていたら、いつのまにか、同業者の間でも「かなりマメ」な部類に入っていた。ほかのギタリストなら「スタッフさんの領分」と思うようなことも、自分で調整するので、ときどき驚かれる。「真空管のバイアス調整なんて普通やらないでしょ⁉」といわれるが、自分でやりたいので、やっている。
これは「うまくいかない理由」を特定するためにもけっこう役立つ。うまく弾けなかったとき、自分の側に理由を絞り込める。「ツイてなかった」とかなんとか、あやふやな理由でお茶を濁さずに済む。
スタッフさんの運搬の仕方がいけなかったんだ! なんてことを言い出す理不尽クレーマーにもならずに済む。だから身の回りのこと、とくにこだわりのある事柄に関しては、自分で管理している。これは「怒らない」ことに役立っている。
聞き役のときは「犬モード」
僕はなんとなく「いい人」のように思われがちだが、ここで本邦初公開、”いい人の秘密”を告白したい。
巷では、人としゃべるときのルールが、いろいろ語られている。自分の話ばかりしちゃダメとか、聞き役になってあげようとか、相手の話を覚えておいて「あれからどうなった?」なんてアフターケアもしようね、とか。それを全部きっちり守る人は、すごくいい人だ。でもそういう人って、あまりハッピーじゃなさそうだ。気を遣いすぎてヘトヘトになってるのかもしれない。
僕は、そのタイプのいい人ではない。聞き役になっているとき、実は、ほとんど聞いていない。込み入った話を長々とされたら、「聞いてるフリ」モードに入る。そこに座って「そうかあ、うんうん」とかなんとかいっているが、言葉は右から左に流れている。話が終われば、内容はほとんど消え去る。
これって不誠実だろうか? バレたら相手は気を悪くするだろうか?
バレていい、と僕は思う。相手はただ「話したい」のであり、そんなときは目の前に人がいるだけで安心するものだ。だから十分、役割は果たせている。ペットを飼っている人ならわかるのではないだろうか。
悲しいことがあったときに、ワンちゃんに「今日、落ち込んでるんだ~」なんて話しかけることがあるでしょう? その話をワンちゃんが理解していなくても、癒やされませんか? 僕が目指しているのはその感じ。犬モード。とても楽です。
自分が話したいときはどうかって? もちろん、僕にも話したい欲はある。なんだかわからないけれど、話したくなるときってある。相手が人間でも動物でも、下手すると生き物じゃなくっても。
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