ELTいっくんが「いい人に見える」深いワケ 音楽界の中間管理職、仕事を語る

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最近は、動画やテレビについ話しかけるようになった。流れてくる情報に対して、「うそ~」「いや、それはないっしょ」とか言ってしまう。でもこのクセは、意外に役に立っているかもしれない。

僕はトークが下手だ。なのにテレビに出ている。そのせいで、プチ放送事故みたいなのをしょっちゅう起こす。言葉がすぐ出てこなかったり、出てきたと思ったらアサッテなこと(僕的にはつながっているんだけど)を言ってキョトンとされたり。それを防ぐための、簡単トレーニングが、テレビとの会話。効果が出ているかどうかはわからないが、そういうことにしている。

ジェネレーションギャップは「植物図鑑」で解決

若い世代は、「飲みニケーション」をしたがらない。「飲みに行くか! 今日は俺のおごりだ!」と上司に誘われても、「いや、いいっす」とアッサリ断る。一方、おじさんたちは誘い好きだ。僕より上の世代には、バーンと怒鳴った数時間後に「よし、飲みに行くか!」となるような、ややこしい人も多かった。

僕は、そういう熱い世代と低温世代との間にいる。誘われたら「いや、いいっす」とは言わずについていくが、下の世代を積極的に誘うこともない、中途半端。いや、中温を保っている。そのうえで僕は、高温低温どちらも「アリ」じゃないかと思っている。若い人はともすれば、上の世代に対して「性懲りもなく何度も誘ってきてウザイ」なんていうけれど、いいじゃないか。そういう「種」だと思えば。

植物図鑑を開くと、木だの草だのがいっぱい載っていて、それぞれの生態が書いてある。あのイメージだ。「多年草、全長1~2m、繁茂地域はオフィスビル」。で、備考欄に「こっちがどれだけイヤな顔をしても、性懲りもなく誘い続ける」みたいなデータが載っている。これなら、このタイプの種が現れても「ああ、こんなところに木が茂っているね」というふうに、まったりと受け止められないだろうか。

誘いには、気が向かないなら応じなくていい。僕が若いころは誘われたら行ったけれど、今の若い世代が誘いを断るのは、もちろんアリだ。むしろ若者は、上の世代と無理してまで交わらないほうがいいんじゃないかな。

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というのも、これから日本はどんどん高齢化していくからだ。高齢者の数が多くなれば、自然と「おじいちゃん、おばあちゃん主導」の社会になる。高齢者が喜ぶような文化が栄えて、商品のトレンドとか経済動向も高齢者中心になる。高齢者の声のほうが、響きやすい世の中になる。頭数でいえば、若者は全然太刀打ちできない。

それなら、若い人は若い人のコミュニティーをつくって、その中で文化を生成したほうがいい。そのほうが楽しいだろうし、生産的だ。無視するわけでも嫌うわけでもなく、高齢者・中年・若者が、それぞれ楽しんで、必要な範囲で適宜コミュニケーションもとって。

いろんな植物があるんだね、とそれぞれ思いながら、それぞれが葉を茂らせていたら、そこそこ平和で穏やかな社会になりそうな気がする。

伊藤 一朗 Every Little Thing ギタリスト

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いとう いちろう / Ichiro Ito

1967年11月10日、神奈川県横須賀市生まれ。蠍座のA型。1996年、30歳目前でEvery Little Thingとしてデビュー。ファーストシングルは「Feel My Heart」。その後も、「Dear My Friend」「出逢った頃のように」「Time goes by」「fragile」など、数々のヒット曲を生み出す。ELTとして23周年を迎える一方で、バラエティ番組でも活躍中。通称は「いっくん」。

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