進むテレビ広告離れ、キー各局の「秘策」とは ネット広告伸長などでスポット広告が2桁減

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TBSホールディングスも「赤坂エンタテイメント・シティ構想」と題した東京・赤坂地域の再開発を三菱地所とともに計画している。投資規模など詳細は明らかではないが、劇場などエンターテインメント施設の運営を拡大していく。同時に2020年度までに500億円規模の戦略的投資をしていくとも公表しており、新規事業およびM&Aの推進にも積極的だ。

放送以外の新業態は本業と異なるため、失敗時のリスクが大きい。しかし、フジ・メディアHDのサンケイビルのように、リターンも大きい。

一方、6年連続年間視聴率三冠王を射程に収める日本テレビホールディングスは、本業である放送のスポット収入を伸ばす策に注力している。決算説明会では「どれくらい効果があるかはわからないが、新しいスポットの売り方にチャレンジしていく」(酒巻和也取締役)と明かした。

テレビ広告の価値をいかに高めるか

ネット広告と異なり、テレビ広告は雨が降っているから傘のCMを打つというように、状況に応じて機動的にCMの内容を入れ替えることが難しい。そういう利便性に劣っていたテレビ広告だが、出稿期間の短縮など、柔軟性を高めることによって使い勝手を改良していく。

日本テレビHDの酒巻和也取締役は「(テレビ広告が)右肩上がりに上がっていくことはないが、テレビの価値を高めることで減少を抑えていきたい」と語っており、ネット広告へのシフトを少しでも食い止めようとしている。ただ同時に、アクティブラーニング型の研修事業など新事業にも乗り出しており、放送と放送外事業を両にらみで強化していく。

すべての放送局が一様に「放送が中心事業」と訴えるが、その柱のスポット収入は落ち込みが激しい。その中でどのように生き残るのか。従来以上に、放送局の枠組みにとらわれない取り組みが求められている。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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