ボルボが手がける「車のサブスク」は広まるのか ニッチメーカーが挑む新しい車の売り方

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3つ目が3年で乗り換える場合に残価保証50%を確保した点だ。一般的な残価設定ローンでは、差額が発生した場合には利用者に追加料金の支払いが求められる。新スマボでは差額はディーラーとボルボ・カー・ジャパンが負担する。適正な販売で中古車価格が安定しているからこそできる残価設定だという。販売価格の半額を3年で支払えば済むため、月当たりの価格が抑えられる。

ボルボにとってのメリットも

ボルボ側にもメリットがある。まず1つが顧客との接点をつねに持てること。月々の支払いや点検でつねにお客と関わることで顧客のロイヤリティーを高められる。

ディーラーにとってアフターサービスは重要な収入源でもある。サブスク形式にすることで、ディーラーでの修理、メンテナンスが前提になることは大きなメリットと言える。

最後に質のいい中古車が必ず販売店に返ってくることだ。スマボではつねに正規販売店でメンテナンスを受ける。そして3年後には必ずディーラーに車が戻る。こうすることで良質な中古車を確保する。価格の安い中古車を入り口に販売の間口を広げる戦略だ。「輸入車を一度買うと国産車にはまず戻らない」(木村社長)というだけに入り口が重要になる。

返ってきた車は「SELEKT」と呼ばれる認定中古車で販売する。中古車市場は消費者にとって不安要素が多い。実際、海外で事故を起こした車両などが紛れ込むことがあるという。そうした不安を取り除くのが認定中古車制度。メーカーとディーラーが品質を保証することで安心して買ってもらう。国産車よりも輸入車業界で発達している制度だ。「SELEKT」では整備に加えて、安全装備のソフトウェアもアップデートしたうえで販売する。

ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長はサブスクリプションサービスのメリットを強調する(撮影:梅谷秀司)

とはいえ、車のサブスクリプションを広めるのは容易ではない。ソフトなどと違い、実物資産である車は1台ごとに大きなコストがかかる。加えて、日本ではナンバープレートを取得すると車の価値が大きく下がるため、短期の解約がリスクになる。従来、車を売りきりで販売してきたディーラーからすればメリットが見えにくく、消極的になる場合も少なくない。

ボルボは今回の新スマボと類似サービスで、販売台数の20%を目指すという。「車が戻ってき始めたことで、ディーラーにもメリットが見えやすくなってきて販売にも積極的になってもらえている」(木村社長)。国内販売約1万8000台、世界でも約60万台とニッチメーカーのボルボが、新しい自動車販売の形を作り出そうとしている。

【2019年11月27日12時50分追記】初出時、サブスクリプションサービスの新プランの概要と、ボルボの世界販売台数に誤りがあったため、表記のように修正しました。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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