創通「ガンダム安売り」買収が反対されるわけ バンダイナムコ、版権一本化が直面する関門
次に、今年6月に経産省が策定した「改定MBO指針」に反するおそれもある。強制力はないものの、少数株主保護のため、買収提案を受けた会社側は特別委員会を設置すること。さらに、特別委員会は会社側とは別に法律アドバイザー・財務アドバイザーを選任し、独自に株価を算定することを推奨している。
買収される会社の経営陣は、買収後の地位や報酬を買収者から保証されることが多く、少数株主とは利益が相反する事態が起きやすい。今回は特別委員会は設けられたものの、法律アドバイザー、財務アドバイザーをともに選任せず、会社側のアドバイザーをそのまま流用した。独自に株価の算定書も作成しておらず、MBO指針を無視している。
TOB価格の算定根拠は開示されず
また、特別委員会が助言を得た法的アドバイザーのTMI総合法律事務所には、那須雄治氏の長男で弁護士の雄太氏が所属しており、RMBは独立性に問題があると考えている。雄太氏は創通の社外取締役を務めており、利害関係があるとしてTOBへの賛同を決議した取締役会決議には参加していないが、このことは雄太氏が利害関係者であるという認識が会社側にあったことを示している。
そのうえ、TOB価格の算定根拠がまったく開示されておらず、TOB価格も著しく低い。RMBの試算では、グローバル展開されているほかのIP(知的財産権)価値は、ハローキティが約1700億円、ドラゴンボールやワンピースが1900億円。今後、海外展開が計画されているガンダムもこれらに匹敵するIP価値に成長する可能性があるとみている。
だが、その版権の半分を保有する創通の時価総額は、TOB価格3100円で計算すると465億円にすぎない。プレミアムこそ66%と高水準だが、そもそも株価が企業価値を反映しておらず、「公正な価格は少なくとも1株当たり4600円、時価総額で690億円」と主張している。
RMBの反対表明はTOB価格の不満ゆえともみられたが、「最も主張したいのは買い付け条件が均一かどうかがわからない点」(細水氏)だという。
今回のRMBの主張について、バンダイナムコは「反対表明は報道等で確認しているが、創通株式に対する公開買い付けの目的や背景、株式価値算定に関する事情等はリリースの通り」と回答するのみだった。
今回のように、大株主との間の別の取引がセットになっているケースで、買い付け条件の均一性が争われた裁判例は、日本ではほぼないとされる。
11月25日で終了するTOB期間内に那須氏が翻意をしない限り、TOBは成立するが、買い取り価格決定の申し立てなど、何らかの形で「第2幕」が控えていることは間違いない。
バンダイナムコホールディングスの株価・業績 は「四季報オンライン」で
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら