キーエンス、「40代半ばで新社長」の最強法則 9年ぶり社長交代、株式分割に伴い実質増配も

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木村氏は「個別での対応だと回答するまで待ってもらうことでタイムラグが発生していた」と話し、個別対応にもこれまでどおり応じていくと説明している。

決算発表と同じ日にキーエンスはもう1つ重大な発表を行った。9年ぶりの社長交代だ。山本晃則・現社長が12月21日付で代表権のない取締役特別顧問に就き、事業推進部長で6月に取締役となった中田有氏が社長となる。中田氏は45歳で、現在9人いる取締役(監査役を除く)の中で2番目に若い。

社長業における「キーエンスウェイ」

現社長の山本氏は2009年に取締役事業推進部長となり、翌2010年に45歳で社長に就任した。前社長の佐々木道夫氏は1999年に取締役事業推進部長となり、翌年に43歳で社長に就任した。その前任は創業者の滝崎武光氏だが、55歳で社長を佐々木氏に譲っている。

滝崎氏を除く歴代社長は、事業推進部長を経て40代半ばで社長となり、社長として約10年間職務を担っている。キーエンスは「事業の発展のために最適な人事を行っている」とするのみだが、「何かしらのキーエンスウェイなるものがあるのだろう」(外資系証券会社のアナリスト)との見方もある。

1989年に撮影されたキーエンスの滝崎武光氏(編集部撮影)

1988年2月13日号の「週刊東洋経済」で取材に応じた滝崎氏(当時は社長)は「私個人はそんなに好かれる人間ではないし、泥臭く個性で引っ張る経営は中小企業止まり。大企業はどこでも理念主導、オーソドックスでしょう」と語っており、個性的なトップに依拠する経営には否定的な考えを示していた。

もちろん、キーエンスが社長は誰でもいいと思って選んでいるわけではないだろうが、1人のカリスマに依存しない経営を築き上げているのなら、それは強みといえる。創業者の滝崎氏を含め、上司でも「さん」付けで呼び合い、論理的であれば新人の意見にも耳を傾けるフラットな組織文化がある。「技術開発力と自社の商品をしっかり説明できる直販営業体制という2つの強みがある以上、社長交代で経営に問題が起きることはない」(前出外資系アナリスト)。

ただ、現在のキーエンスを生み出した滝崎氏は、自身の資産管理会社を含めてキーエンスの株式の2割以上を握るとされる事実上の筆頭株主で、取締役名誉会長として経営にも携わっている。

キーエンスが本当にカリスマに依存していないのか。それは滝崎氏が経営を退いた時に真価が問われることになりそうだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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