桜を見る会中止、安倍首相「逃げ恥作戦」の成否 一強政権に追い打ち、浮上する年明け解散説

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そもそもこの会は、1952年に当時の吉田茂内閣が始めたものだ。それ以来、国会議員や都道府県知事、財界幹部、各国大公使に芸能・スポーツの有名人なども加えた「各界の代表者」を招き、首相を中心に歓談する公的行事として定例化してきた。

ただ、第2次安倍政権発足以降、招待者約1万人、関連予算約1700万円という「最近の原則」(政府筋)を無視するかのように、年々招待者数と関連経費が増大。今年4月は参加者約1万8200人、経費約5500万円に膨らんでいた。

しかも、首相の地元の山口県の有権者に対し、「あべ晋三事務所」と明記された観光ツアーの参加受付文書が送られていたことが発覚した。首相関連の招待者は850人と突出しているとされ、瞬く間に首相自身の政治的スキャンダルに発展した。

野党側は徹底追及の方針

8日の答弁で「私は関与していない」と交わした安倍首相だが、連日民放テレビのワイドショーで取り上げられたことから、首相サイドも「早く火消しをしないと、今後の政権運営の大きな火種になりかねない」(官邸筋)と焦燥感を強め、急遽、来年度中止に踏み切ったとみられている。

2閣僚辞任劇や民間英語試験の導入見送りを「政権打倒のチャンス」と位置づけた野党側は、「いよいよ本丸(首相)攻撃だ」(共産党幹部)と勢いづいている。

開催中止発表を受けて野党側は「中止したこと自体が(公的行事の)私物化を認めたことで、首相の責任が問われる」(小池晃共産党書記局長)とし、この問題に関する衆参両院での集中審議開催を要求するなど徹底追及の方針で、安倍首相も応じざるを得ない状況とみられている。

その一方で、自民党は「それぞれの委員会で審議すればいい」とガードを固めている。「そもそも、『桜を見る会』は民主党政権時代にも開催されており、野党の追及はすぐブーメランになる」(自民国対)との読みもあるからだ。

民主党政権下の2010年に当時の鳩山由紀夫内閣が桜を見る会を開催した(2011年の菅直人内閣は東日本大震災で、2012年の野田佳彦内閣は北朝鮮のミサイル発射予告でそれぞれ中止)。当時政権の一員だった玉木雄一郎・国民民主党代表は13日の記者会見で「(当時は)各議員に4人の推薦枠があり、私もお世話になった方々を連れていった」と自戒交じりに語った。

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