トランプ氏の弾劾公聴会で世論は動くのか 2極化社会で民主・共和の対立は激しさ増す

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弾劾阻止へ共和党が投入したジム・ジョーダン下院議員(写真:REUTERS/Leah Millis)

一方、共和党そしてホワイトハウスも公聴会に向けて着々と準備している。

共和党は防衛態勢ではなく、攻撃態勢で臨む方針だ。共和党は証言者の信憑性を疑うといった強硬対決の手法を採用する。これは、共和党が強引にカバノー最高裁判事指名承認を行った際に功を奏したやり方だ。証言者の多くがウクライナ向け軍事支援とバイデン親子の調査などについてトランプ氏と直接会話をしていないことから、証言が2次情報に基づくものである点を、共和党議員は特に追及する見通しだ。また証言者の主張の矛盾や民主党とのつながりを追及する激しい攻撃が予想される。

攻勢に出る共和党指導部は、公聴会を実施する情報特別委員会のメンバーとして、ジム・ジョーダン下院議員(オハイオ州選出)を急遽、現職と差し替えて投入する。ジョーダン氏は、レスリング全米大学選手権の元チャンピオンで、保守強硬派の下院議員連盟「フリーダムコーカス」の設立メンバーで、攻撃的な口調でトランプ氏を強硬に守ってきた人物である。公聴会では証言者の主張を覆そうと、証言者に「反トランプ」のレッテルを貼るなど激しい攻撃を行うことが想定される。

共和党指導部はジョーダン氏以外にも、マーク・メドウズ前フリーダムコーカス議長など親トランプ派を情報特別委員会の現職メンバーと差し替えることを検討しているという。

共和党は団結で罷免阻止も、大統領選にマイナスか

下院情報特別委員会で共和党の攻撃に対抗するのが、アダム・シフ下院情報特別委員長だ。ペロシ下院議長はシフに絶大の信頼を置いている。ペロシ下院議長は、ロシアゲート問題の扱いでジェロルド・ナドラー下院司法委員長に不満を抱いており、ウクライナ疑惑ではシフにより多くの権限を付与している。ハーバード大学ロースクール出身のシフは長年、検事としての経験があり、弾劾を仕切るには最適な人材だ。

シフ氏はすでにトランプ氏の攻撃の的となっているが、これに冷静に対応していることで党内でも信頼が厚い。今後、公聴会を通じて、シフ氏の知名度はますます高まるだろう。トランプ氏とその周辺から、ますます批判の対象となりそうなシフ氏には、両党指導部以外の議員としては唯一、議会警察が警護にあたっている。

下院では弾劾が避けられない見通しのため、情報特別委員会の公聴会には共和党議員が団結して臨み、論戦は大荒れとなることが予想される。共和党の団結により、上院で大統領の罷免は回避できるとみられるが、そうした戦略によって、2020年大統領選において重要となる無党派層の支持を失うリスクがある。下院民主党指導部の公聴会の真の狙いは、無党派層の民主党への支持拡大なのかもしれない。

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