人によって感じる「シニア独特に臭い」の正体 日本では「加齢臭」は偏見の対象になっている

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高齢者の体臭については、2001年に日本の研究チームが、油っぽい臭いを産出する不飽和アルデヒド「2-ノネナール」が中高年の皮膚に多く見られるという論文を発表している。モネル化学感覚センターの生化学者ヨハン・ルンドストロム(46)は、自分たちの研究でもこの論文を裏付ける結果が得られたと語る。

ルンドストロムの研究は本人も認める通り小規模なもので、20~95歳の人々の脇の下から採取したサンプルを使い、41人の被験者に臭いの強さや不快さを採点させた。また研究チームによれば、「被験者たちは高齢者から得た体臭については正確に高齢者のものだと言い当てた。だが、他の年代の人々の体臭のことを高齢者のものだとは言わなかった」そうだ。

加齢臭は「不快ではない」

だが、同じくモレル化学感覚センターの分析有機化学者のジョージ・プレティ(74)は、自分の研究の結果はこれら2つの研究とは一致しなかったと語る。プレティの研究チームは背中と上腕から採ったサンプルをガスクロマトグラフィーと質量分析計にかけたが、2-ノネナールが年配者の皮膚に存在することを示す「分析手法はない」との結論に達したという。

「高齢者は、実際には若い世代ほど臭わない」とプレティは言う。「世間の言う高齢者のかび臭に似た不快な臭いなど、衛生面で問題のある人もいる老人ホームにでも行かない限り嗅ぐことはないはずだ」。

「ジョージ(・プレティ)が何と言ったかは分かる」とルンドストロムは言った。「彼は間違っているし、研究の幅も狭すぎる。彼はこの件について過敏に反応しているだけだ。なぜなら自分自身が高齢者だから」。

一般的に臭いを嗅ぐブラインドテストを行った場合、最も不快だと判断されるのは若者でもなければ高齢でもない中年男性の体臭だということが明らかになっている(ちなみに体臭に対する評価が最も高いのは中年女性だ)。化学分析もこれを裏付けており、年少者や高齢者では脂肪の分泌が少ない。

ルンドストロムの研究はいわゆる加齢臭の存在を裏付ける一方で、平均的な被験者はその臭いを「よくも悪くもなく」「不快ではない」と答えていた。ルンドストロムはこの臭いの印象が悪くなるのは時と場合によりけりだろうと考えている。家畜の糞の臭いのようなもので、畜舎でかぐ分には自然でも、寝室で嗅げば心かき乱す嫌な臭いになるというのだ。

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