「インスタ映え」に若者が超熱中する社会的背景 なぜ人はパンケーキ写真を投稿するのか

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機能をそぎ落とす、シンプルにする。それはユーザーの体験、そしてユーザー間での口コミのためでもある。インタビュー(2019)の中で、シストロムは「『これは何のサービスなのか』を明快に伝えたいと思っていました。あれこれ機能が詰まったサービスだったら、ユーザーは友達になんと紹介したらいいのでしょう」と語っている。

そしてそれは、「投資家だけでなくユーザーのためにも、その商品を使うべき理由を明確にする必要があるのです」という判断にも基づいているのだ。

その当時はまだスマートフォンのカメラ性能が高くなかったため、初期のインスタグラムはフィルター機能(色味の調整や写真全体のトーン&マナーの調整機能)が人気だった。フィルターをかければ、誰が撮ってもオシャレな写真の出来上がりというわけだ。

この機能については、先述のインタビューによれば、シストロムの妻が「写真は下手だからシェアしたくない」と言っていたところから、フィルターがあればもっと気軽にみんなシェアできるようになるのではないかと気づいたという。

インスタが爆発的に広まった理由

身近な人の困っていることやニーズを満たすことで、多くの人に使われるサービスになっていくということ。インスタグラムもそのような気づきから出発していたというところにSNS普及のキーがある。数億人に使われるほどのはやるサービスも、出発点には作り手の誰かの、相手への具体的な想いがあるということが大切だと感じる。

また、「インフルエンサーマーケティング(インターネット上で影響力を持つ人々の情報発信を活用すること)」を、インスタグラムもローンチ当初は活用していたという点が興味深い。ただしそこで注目すべきは、いわゆるセレブではなくクリエーターたちに注力したということだ。インスタはクリエーティブな場、それを支援するツールであるという理念がそこに表れている。シストロムはこう述懐している。

フォトグラファーやデザイナーといった、インフルエンサー約100人に(インスタグラムに)登録してもらいました。そしてローンチの日に、ツイッターやフェイスブックにリンクを張ってもらい、それがバイラルループを生み出し、爆発的に広がっていったのです。
巨大なトラフィックを持つネットワークにインスタグラムの写真を投稿すると、そのネットワークのユーザーをインスタグラムに呼び込むことができます。するとアプリをダウンロードするリンクが表示されて、新規ユーザー登録がなされる……。ただし、インフルエンサーと言っても、いわゆるセレブではありませんでした。
そもそも私たちなんて(セレブに)相手にされなかったのでしょう。私たちが声をかけたのは、インスタグラムを最も必要としていた人たち、つまり当時のシリコンバレーのクリエーティブ関係者や写真家、デザイナーでした。
(『NewsPicks』編集部「イノベーターズ・ライフ Instagram創業者ケビン・シストロム」)
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