外科医 須磨久善 海堂尊著
同じ著者の『チーム・バチスタの栄光』のおかげで、バチスタの名は広く知られるところとなったが、難しいバチスタ手術を創意と高度な技によって定着させた須磨久善氏の半生記である。語り手は、現役の勤務医でありミステリーや医科学書で知られる人気作家、ということでドラマチックかつ興味深い伝記に仕上がった。自ら開発した胃大網動脈バイパス手術を、世界の外科医たちの面前で行う超人的な公開手術は、これ以上ない導入部である。
縦糸に心臓外科における挑戦の数々、横糸に主人公の心理と人間性、という構成によって、外科医がどのように青年期から専門医へと足場を固め、問題意識と技術を深めていったかがつづられている。葉山ハートセンターという「夢」の実現が終章に置かれていることも含め、影の部分がいささか物足りない一種のサクセスストーリーではあるが、型破りの外科医の姿からは医学を超えた示唆が少なからず得られるだろう。(純)
講談社 1200円
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