世界の鉄鋼業界− 実需の牽引役が不在、ネガティブな見通しを継続 《ムーディーズの業界分析》

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 中国に関する懸念の一つは、中国の輸出が他国のメーカーにどの程度の脅威となるか、という度合いである。現状の予測によれば、今年の中国の鉄鋼生産量は約5億トンだが、消費量は約4.2億トンに過ぎず、この過剰分が潜在的な輸出ファクターとなっている。中国がどこへ輸出するかは、他国における価格設定、為替レート、および輸送コスト次第であろう。人民元が米ドルに対して固定されていることを考えると、ドル安が進んだとしても米国への輸出を妨げる要因にはならないと思われる。

<韓国> 韓国の鉄鋼業界も、中国と同様に政府の総合景気刺激策を受けて堅調な稼働率を享受している。また韓国の輸出業者は、ウォン安と中国の強い需要の恩恵も受けている。しかし、中国でもそうだが、需要に持続性があるかは不明である。

<インド> インドの鉄鋼業界の稼働率は、ほぼ100%である。さらにムーディーズは、今年の成長率を前年比5%増と予測している。景気刺激策による大規模なインフラ整備支出、自動車、耐久消費財、建設業界の回復の兆しが、鉄鋼需要を支えている。しかしながら、インドはまもなく中国の鉄鋼業界が輸出を増加させる仕向先となる可能性が高い。このような事態になれば、インドの鉄鋼業者が政府に対して、輸入関税の引き上げなどの保護政策を申請することになるであろう。

<米国と欧州> 米国と欧州では、稼働率が第1・第2四半期よりもいくらか改善し、2009年後半は安定するとみている。しかしながら生産は比較的低水準にとどまり、米国・欧州の大手鉄鋼メーカーにとって収益性を上げるのは困難であろう。2010年になっても、穏やかな改善しかみられないと予想する。

米国の稼働率は8月中旬には約53%に達し、熱延ロール価格は500ドル台/1トンに上昇した。5月にはそれぞれ稼働率は40%半ば、同価格は392ドルであった。ムーディーズは、建設や自動車などの主要な最終消費市場は依然として弱いため、この結果は在庫投資再開によるものとみている。欧州も似たような状況だが、最終需要の回復というよりは在庫投資再開によるものだろう。

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