世界の鉄鋼業界− 実需の牽引役が不在、ネガティブな見通しを継続 《ムーディーズの業界分析》


コーポレートファイナンスグループ
VP−シニア・アナリスト 岡本 賢治

 ムーディーズは、昨年末以来の世界の鉄鋼業界における事業環境の急激な悪化は終わったと考えている。しかしながら、現在のところ、需要、価格、および稼働率の2010年前半にかけての持続的な改善を促すきっかけとなるようなものは見えていない。したがって、ムーディーズは世界の全ての地域における鉄鋼業界のネガティブな見通しを継続する。

確かに在庫投資の再開が、最近の稼働率や価格の上昇へのドライバーになっているようにみえる。しかしながら、中国とインドを除いて、潜在需要は依然として弱い。全般的に本格的な回復は、まだ見えていないため、現在の需要レベルは持続しない可能性がある。

ムーディーズは、金融危機は世界経済を同時に襲ったが、回復のタイミングと速度は地域によって異なると考えている。事業環境の持続的な改善は、最初にアジアと中南米で始まり、その後米国と欧州に広がる、と予想している。ムーディーズは地域ごとに業界の見通しを立てている。鉄鋼業界の見通しをネガティブから安定的へと変更するのは、アジアが最初になりそうだ。

地域別の鉄鋼業界の見通し
アジア(日本を除く)


 <中国> ムーディーズは中国の鉄鋼需要に対して、慎重ながらポジティブな見方をしている。中国政府の景気刺激策が需要を喚起したことにより、この数カ月で鉄鋼生産は大幅に増加した。ムーディーズは、今年いっぱいは強い需要が持続するとみているが、景気刺激策は一時的である。軟調な世界経済の中、この刺激策の効果が剥落したときになって初めて、需要回復がどの程度持続可能であるかが明らかになるであろう。

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