世界の鉄鋼業界− 実需の牽引役が不在、ネガティブな見通しを継続 《ムーディーズの業界分析》
鉄鋼業界は全体として生産能力が過剰であり、特に米国・欧州においては、需要が以前のレベルに回復するか否か疑問が残る。ムーディーズは、業界のファンダメンタルズが長期的に改善するには、特に米国、または欧州においてさえ、生産設備の閉鎖が不可欠であると考えている。
<中南米> 中南米の内需は政府の刺激策により改善がみられる。しかしながら、さまざまな刺激策が終了した後にも、需要が継続して伸び、堅調な輸出が続くことが、持続的な改善のためには不可欠である。為替レートの変動は価格競争や輸出水準に大きく影響するだろう。
<ロシア> ロシアと独立国家共同体(CIS)では、主な輸出先である中国だけでなく、トルコや中東へ輸出することに加え、いくつかの生産設備を閉鎖することによって、稼働率はほぼ100%になっている。数年前は輸出が生産の約50%であったのに対し、現在は生産のほぼ80%にのぼる。2009年上半期において、この地域での低コスト生産や優位な為替レート、国際価格に比べて比較的高い中国の国内価格が、ロシアの輸出業者に利益をもたらした。輸出業者はまた、中国鉄鋼メーカーと大手鉄鉱石供給者間の鉄鉱石輸入契約締結の遅延からも恩恵を受けており、ロシアメーカーをさらにコスト競争力のある地位へと押し上げた。これらの要因が逆方向に変化した場合、輸出市場におけるロシアメーカーの競争力は低下すると思われる。
内需の回復の兆しが見えず、GDPは月ごとに著しく低下し、ロシア経済は縮小を続けている。この地域における主要な消費産業は石油、ガス、建設と自動車であり、石油やガスは安定的である一方で、他業種では多くの企業が高レバレッジや構造改革、破産といった試練に直面している。