セブン&アイ、再び「物言う株主」に狙われた理由 今度は香港の投資ファンドが株を取得

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オアシス側は、2016年5月に井阪隆一氏が社長に就任して以来、株価が低迷していることに危機感を抱いているほか、社外取締役についても事業に関する知識が乏しく、取締役会が機能していないとの不満を持っている。そのため、ガバナンス体制について強化すべきとしている。

そして第三に、経営陣にITリテラシーの高い人材を登用することを求めている。こうした施策に加えて自社株買いなどを実施して、現在40%程度の総還元性向を「50%まで引き上げろ」と要求しているのだ。

こうしたオアシスの要求に対して、セブン&アイの幹部は、「投資ファンドだから当たり前の話だが、株主還元を強めよと言っているあたりから、株価を引き上げて高値で売り抜けるのが目的なのではないか」と語る。セブン&アイ側は、オアシスに対し、書面を受け取った旨の返事こそしたものの、明確な回答はしていないもようだ。

2度あることは3度ある

オアシスの要求自体は、それほど驚くべき内容ではない。セブン&アイは2016年にもアメリカのサード・ポイントから大量の株を買われているが、その際も「イトーヨーカ堂を分離して、儲かっているコンビニ専業の会社になるべき」との要求を突きつけられている。

その後、セブン&アイでは“中興の祖”と言われていた実力者、鈴木敏文元会長(現名誉顧問)が辞任するという事態に発展。ただ、現在に至るまで、イトーヨーカ堂などの抜本的な改革には手をつけられずにいる。

リストラ策を発表するセブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長(撮影:今井康一)

井阪社長は、10月10日にイトーヨーカ堂とそごう西武合わせて3000人規模の従業員を削減することなどを柱とするリストラ策を発表したものの、「抜本的な改革とは言い難い」(セブン&アイ関係者)との声がもっぱら。オアシス側も「スピンオフまで踏み込んでおらず十分ではない」(投資ファンド関係者)と見ているもようだ。

オアシスの株の買い付けは1%未満とみられる。セブン&アイ内部からは「オアシスは、サード・ポイントほど株を買い付けておらず、どこまで本気なのか分からない」といった声も聞かれる。

ただ、たとえそうであったとしても、イトーヨーカ堂の改革を実行しない限り、“二度あることは三度ある”で、次の物言う株主から狙われるのは必至。発表したリストラ策をさらに踏み込んだものにし、着実に実行して株価を引き上げなければ、セブン&アイはいつまでも狙われ続けることになるだろう。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。『セブン&アイ 解体へのカウントダウン』が小社より24年12月発売予定。

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