ペイペイモール「最後発だから勝てる」皮算用 ヤフーのEC戦略「最前線」をキーマンが明かす

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――ECモールは上位への寡占化が進んでいます。日本において、ペイペイモールは「最後発」ともいえますが、どう戦いますか?

さっきも話したとおり、新しく作るからこそこれまでと違う世界観のモールを作りやすい、というのが1点目の優位性だ。UI・UXもそうだし、配送や顧客対応もそう。これは数万店舗ある中では、なかなか高いレベルでコントロールしにくい。新しく作る意味はまずここにある。

もう1つは、1900万を超える登録者を抱えているペイペイの存在だ。リアルとネットの融合というキーワードはここ数年、あちこちで聞かれるようになったが、真に実現できている会社はまだ少ない。ペイペイをフル活用できるアドバンテージは大きい。ネットだけで閉じる、リアルだけで閉じるのではなく、ペイペイを基軸にその垣根をどんどん取っ払っていく。

ペイペイを活用したリアルとネットの融合について語る畑中氏(撮影:今井 康一)

例えば今回、ペイペイモールにはリアル店の在庫情報を掲載できる機能を付けた。利用者がペイペイモールで商品を検索したときに、ネットでも買えるけど、家の近くの店舗に在庫があればそれがわかるようになっている。家電や衣類など、実物も見たい場合もあると思うし、ペイペイの加盟店ならリアル店でもオトクに決済してもらえる。

この機能に対応してくれている店はまだないが、機能としてはすでに実装されているので、あとは出店者がリアルの在庫の情報を投入してくれれば使える。リアルとネットをシームレスにつないだ顧客獲得は、小売店にとっての課題でもある。そのソリューションとしても、ペイペイ×ペイペイモールで価値を高められればと。

しばらくは「利益度外視」も

――業績面から見ると、コマース事業でどう利益を生んでいくかは重要な課題です。ヤフーショッピングと違い、出店料を取る事業モデルですが、その点はどうですか?

たしかに、収益への貢献という意味でもペイペイモールのポテンシャルは高い。ただ、収益を求めたいがために出店料という条件を付けているわけではない。事業としてやっていくからには利益を出すことは重要だが、しばらくは多少利益度外視になっても圧倒的な利便性を出すことに注力し、出店者がここに出店する意義、利用者がここで買い物する意義を追求していく。

――ECでもペイペイをフックにした還元キャンペーンは今後積極的に?

ユーザー動向を踏まえて変えていく可能性はあるが、基本はそう考えている。「ペイペイ」の名前を語っている以上、それは生かさない手はない。立ち上がりがうまくいった事例として、コマース全体でその成功を踏襲したい。

ペイペイの立ち上げにも携わってきた私としては、手前みそだが、ペイペイに見習うべきところは非常に多いと感じている。顕著なのはマーケティング戦略だ。あまねく、いつでもどこでも平べったくというふうにやるより、どーんとスポットで、かつ「100億円」のようなインパクトのある打ち出し方をしたことは効率的な利用者獲得につながった。

この手法は加盟店営業にもメリットをもたらした。「来月にはこんなキャンペーンがあるので、今ぜひ加盟してください」といった訴求ができたので、加盟してもらうきっかけをうまく作れた。マーケティングと加盟店・出店者の獲得をリンクさせた営業を、今回のECの展開にもしっかり引き継ぎたい。

『週刊東洋経済』11月9日号(11月5日発売)の特集は「EC・決済覇権バトル」です。
長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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