アメリカ発の「代替肉」が気づけば急拡大の予感 植物から肉を製造・販売する企業に注目集まる

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ケンタッキーフライドチキンの試験発売した店舗(写真:Beyond meat)

それだけではない。ピザハットなどを展開するヤム・ブランズ(YUM)は、傘下のケンタッキーフライドチキンで植物由来のフライドチキンとナゲットをアトランタの1店舗1日限りで試験提供し、来客が列をなした。

試験発売した商品(写真:Beyond meat)

またダンキン・ブランズ・グループ(DNKN)も7月にニューヨークでのビヨンド・ミートのソーセージパテを使った朝食サンドイッチ試食会が好評だった。

そのことから、11月より全国のダンキン・ドーナツで「ビヨンド・ソーセージ・サンドイッチ」を展開すると発表している。

「ビヨンド・ソーセージ・サンドイッチ」(写真:Beyond meat)

大手食品メーカーも追随の動きを見せる。コーンフレークなどで知られるケロッグ(K)も参入を表明した。

傘下のモーニングスター・ファーム社でこれまでも野菜バーガーなどを製造販売していたが、新ブランド「Incogmeato」を立ち上げ、遺伝子組み換えでない大豆をベースに外観も風味も肉そっくりの製品を2020年初頭に提供する(下写真)。

あわせて、2021年までに現在の製品をすべて100%植物由来に置き換えることも発表した。

食肉企業も黙ってはいない。食肉加工大手のタイソン・フーズ(TSN)は6月、新ブランド「Raised & Rooted」を立ち上げ、植物由来から製造するナゲットとアンガスビーフと大豆プロテインをブレンドしたバーガーを販売することを発表した。完全な植物由来の製品ではないものの、カロリーや飽和脂肪酸が少ない点などを強調している。

日本ではまだ市場が成長していない

こうした代替肉は、日本ではまだあまりなじみがない。ベジタリアン(菜食主義者)やヴィーガン(卵や乳製品も摂取しない完全菜食主義者)に対応したレストランや飲食店は少なく、スーパーなどで販売されている対応食品の種類もごくわずかだ。

ケロッグの外観も風味も肉そっくりの製品(写真:Kellogg)

ビヨンド・ミートに出資している三井物産によると、ビヨンド・ミートの日本進出計画は取りやめになったようだ。日本はまだ代替肉の市場として期待できるレベルではないということだろう。

だがグローバルベースでみると、市場は今後大きく広がる見込みだ。2019年8月に英金融大手バークレイズが発表したレポートによると、現在、全世界で140億ドルの代替肉市場は、10年後の2029年には10倍の1400億ドルに達し、食肉市場全体の1割を占めるようになると試算している。

欧米ではベジタリアンやヴィーガンが増加しており、アメリカではヴィーガンの人口が2014年の400万人から、2017年には1960万人へと約5倍に増加したとの調査結果もある。また、ベジタリアンやヴィーガンとまではいかなくとも、とくに若い世代において、健康や地球環境への配慮などから肉食を減らす傾向にあることも、代替肉の市場の拡大にはプラス材料だ。

加藤 千明 ファイナンシャル・プランナー、「アメリカ企業リサーチラボ」運営

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かとう ちあき / Chiaki Kato

大手証券会社勤務の後、1993年7月、東洋経済新報社に入社。主に統計指標をベースとした刊行物を担当する一方、電機・化学業界担当記者としてITバブルの全盛期と終焉を経験。その後は、マクロ、マーケットおよび地域動向を主戦場に、データをもとにした分析、執筆などを行う。2005年より『東洋経済 統計月報』編集長、2010年より『都市データパック』編集長。『米国会社四季報』編集部を経て、2021年2月に退社。現在はファイナンシャル・プランナーとして活動するかたわら、アメリカ企業の決算情報を中心にSNSで発信。

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