女性に「動物型マッサージ器」がバカ受けする訳 「ルルド」はなぜ奇抜な商品を出し続けるのか

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アニマルシリーズとして2019年3月に発売されたのが「フットケア コードレスリラブー」(8800円)。フットケアアイテムだが、手のひらにも使えるということで、ハンドケア以上に売れており、発売後3カ月で約5万台販売しているそうだ。

「ハンドケアのほうは追随商品もずいぶん出ていることもあり、売れ行きは落ち着いていますので、今はこちらのほうが伸びています。スイッチを押すと『ブー』と鳴くところも受けているようです。アニマルシリーズの大きな利点が、アイキャッチになるという点です。バイヤーにも女性が多いので、『かわいい』と思ってもらえますし、外見が変わっているので展示会でも『これは何?』といったん立ち止まってもらえます」(深野社長)

アテックス社長の深野道宏氏。ダイエー、オークネットを経て、10年在職していたニトリでは「今でも一番売れているソファ」の開発に携わる。2012年にアテックスに入社し、商品本部の本部長、各主要部門の統括を経て2019年から社長に就任(筆者撮影)

また、ルルド商品が売れる理由として大きいのが、機能と価格のバランスのよさだろう。こちらについては、どのように工夫しているのだろうか。
「当社の本拠地である東大阪は薄利多売という商人の考え方が根強い風土なんです。当社も、利益はできるだけものづくりにあてるという方針です。また、先行者利益をとるために、スピード重視で開発しています。トライ&エラーで、失敗を恐れるなという空気を醸成しています」(深野氏)

同社では年間で12の商品を開発。開発に半年ほどはかかるので、1人の担当者が並行していくつもの商品を受け持っている。スピーディな運営のために深野氏が心がけているのが、「トップが現場に降りていく」トップダウン方式。文字どおり、本部商品管理部門の真ん中に社長の机を置き、開発会議などにも参加して、フラットな関係で意見交換しているそうだ。

「プレス発表会」を重視

また、商品を生み出すのに大きな役割を果たしているのが、年に2度行われるプレス発表会だ。

「まずマスコミの間にルルドのファンを増やす意味がある」(深野氏)とともに、プレス発表で得た反応を、さらに商品にフィードバックすることもあるそうだ。プレス発表を1つのゴールとし、2週に1度は行う開発会議で「商品の魅力をどう伝えるか」を徹底的に追求していく。

確かに、8月29日に行われた秋冬シーズン商品のプレス発表会では、開発担当の社員が入れ替わり立ち替わり登場。プロのMCのようなトークを繰り広げた。アテックスでは毎朝の朝礼で社員が3分間スピーチを行う習慣があるそう。わかりやすくインパクトのあるスピーチは、日頃からの鍛錬の賜というわけだ。

「また、スピーチを考える際には、物事の筋道を立てるという課程が必要です。自然と、仕事のやり方にもつながり、PDCAサイクルをうまく回すことができるわけです」(深野氏)

PDCAがうまく回っている仕事は社員に任せ、トップは違うジャンルを模索するというのが深野氏の方針。次に狙っているのが、シェイプアップや美顔の機能をもつ美容機器、そして東南アジアを中心とした海外展開だそうだ。とくに4月以降、中国でのオンライン通販の伸びが顕著だという。美容と言えば、まさに女性の本領が発揮されるジャンル。また口コミ力がものを言う市場だ。同社の真価を試される場となるだろう。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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