マツダが「アクセラ」「デミオ」の名を捨てた意味 自動車メーカーによる車名戦略の過去と現在

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その上のラグジュアリーセダンやスーパーカーのブランドになると、ロールス・ロイス、ベントレー、ランボルギーニ、アストンマーティンなど、単語による車名が一般的だ。特定のジャンルの単語にこだわるブランドもあり、例えばロールス・ロイスの車名は「ファントム(亡霊)」「ゴースト(幽霊)」などとなっており、ランボルギーニの「アヴェンタドール」「ウラカン」はいずれも闘牛の名前だ。

フェラーリ812スーパーファスト(筆者撮影)

逆にフェラーリは、「812スーパーファスト」は800ps12気筒エンジンと1960年代に存在した「500スーパーファスト」の組み合わせ、「F8トリブート」は8気筒エンジン搭載車へのオマージュ、「GTC4ルッソ」は1960年代の「330GTC」「250GTベルリネッタ・ルッソ」にちなんだもの、「ポルトフィーノ」はイタリアの港町の地名と、あまり統制が取れていない。

昔のフェラーリは前述の330や250のように、エンジンの1シリンダーあたりの排気量を車名にするという凝った方法を使っていた。しかし途中から同じ3桁数字ながら排気量+シリンダー数が主流になり、「モンディアル」「カリフォルニア」など過去に用いた車名のリバイバルも多い。少量生産車では「ラ・フェラーリ」と、そのものズバリもあった。

ブランディングやマーケティングという面では疑問符がつきそうだが、あまりネガティブな意見が聞こえてこないのは、フェラーリだからだろう。

トヨタ「シエンタ」の名前の由来

車名を多くの人に知ってもらうには世界共通であることが好ましい。コスト面でもそのほうが有利だ。しかし世界各国の登録商標を調べるのは手間がかかるし、言葉も限られてくる。ゆえにルノー「ルーテシア」のように、日本以外では「クリオ」という名前で販売していたものの、わが国ではホンダの販売店の名称として登録されていたので、代わりの名称を用意したというパターンも存在する。

スバル新型「レヴォーグ」のプロトタイプ(筆者撮影)

混乱を避けるために、実在しない造語を生み出して与える場合も多い。トヨタ「シエンタ」はスペイン語で7を示す「シエテ」と英語の「エンターテインメント」を組み合わせたもので、スバル「レヴォーグ」は「レガシィ」「エヴォリューション」「ツーリング」からアルファベットを2文字ずつ取って作られた。

こうして見てくると、マツダの車名変更からは、ジャーマンスリーに並ぼうとしていることを車名でも示すという気持ちが伝わってくる。でもそれが世界の車名のトレンドではないことは、ここまで書いてきたとおりだ。個人的には無機質な数字やアルファベットより、デザインや走りにふさわしいネーミングを考えてくれたほうが、そのクルマへの愛着が湧くような気がする。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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