人気急上昇の「iDeCo」に潜む5つの落とし穴 年末調整で申告を忘れると「節税」できない!

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4つ目の落とし穴は、60歳になっても積み立てたお金を受け取れないケースがあることです。厚労省は法改正によって65歳まで延長する方針を打ち出していますが、現在は原則として60歳までしか積み立てはできません。さらに一時金や年金を60歳から受け取れる人というのは、あくまでも60歳までのiDeCoへの加入期間が10年以上の人に限られます。

60歳以前の加入期間によって受け取り開始時期は異なり、例えば60歳までの加入期間が8年以上10年未満の人は61歳から受け取り可能です。加入期間が6年以上8年未満だと、62歳からの受け取りとなります。つまり60歳以前で、加入期間が10年に満たない人は、60歳から受け取ることは原則できないのです。

転職すると、面倒な「移換」が必要になることも

最後の5つ目は、転職に伴って起こる落とし穴です。

企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している企業から転職し、転職先に企業型DCがない場合は個人型(iDeCo)への移換手続きを行う必要がありますが、「期限」が設けられていることはご存じでしょうか。

移換手続き期限については、企業型DCの加入者資格を喪失(退職日の翌日)してから6カ月以内とされています。それを過ぎると、自動的に現金化(自動移換)されてしまいます。自動移換されると、運用が行えないために、資産を増やすことはできなくなります。

また、管理手数料として毎月52円(年間624円)が、資産から差し引かれ続けることにもなります。そのため自動移換される前に、iDeCoに新規で申し込むときと同様に、金融機関からまずは必要な書類を取り寄せましょう。自動移換となった場合でも、新規で申し込むときと同様の手続きを行えば、運用を再開できます。

以前は、iDeCoへの加入者が転職した場合、転職先に企業型DCがあれば、原則としてiDeCoの資産を企業型DCへと移換する必要がありました。つまり、これまで積み立ててきたiDeCoの資産はいったん現金化されて、会社側が指定する運用商品で新たに運用を始める必要があったわけです。

しかし、現在ではiDeCoの資産を企業型DCへ移換することなく、掛け金の積み立てのみを止め、運用指図者(iDeCoで運用する商品を決める人)として、そのまま運用することも可能となりました。その場合の手続きとしては、窓口となっていた金融機関から「加入者資格喪失届」を取り寄せて必要事項を記入のうえ、返送する必要があります。

以上、iDeCoにまつわる落とし穴を5つ紹介しました。落とし穴を踏まえて、iDeCoへの向き合い方を改めて整理してみましょう。

吉田 祐基 ライター兼編集者

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よしだ ゆうき / Yuki Yoshida

各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行う株式会社ペロンパワークス所属。大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。株・投資信託の編集・執筆を担当。ファイナンシャルプランナーの資格も。

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