大学入試改革「炎上」の裏に潜むもう1つの火種

英語のみならず数学と国語でも民間試験導入

ここで「高校生のための学びの基礎診断」とは何かと疑問に思った人も多いだろう。今回の大学入試改革をめぐる議論では当初から、センター試験を基礎編と発展編の2つのテストに分ける方針が決められていた。その発展編が「大学入学者共通テスト」であり、基礎編が「高校生のための学びの基礎診断」なのだ。

数検、漢検、リクルート、ベネッセなどに認定

共通テストの記述式や英語民間試験の話題が盛り上がる一方で、実は「高校生のための学びの基礎診断」は一足先に2019年度から、英語・数学・国語の3教科に関して、民間業者に委託する形で試行実施されている。

民間業者に委託といっても、新しいテストをゼロから開発したわけではなく、基本的に既存の学力試験や検定を文部科学省が認定する形。「大学入学共通テスト」における英語の民間試験導入と同じスキームである。

日本数学検定協会の「数検」や日本漢字能力検定協会の「文章検」、リクルートマーケティングパートナーズが運営するスタディサプリの「学びの活用力診断」、ベネッセコーポレーションの「総合学力テスト」などがすでに文部科学省の認定を受けている。

今回の大学入試改革の設計図ともいえる2016年3月31日の「高大接続システム改革会議『最終報告』」では、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の問題作成の枠組みとして、試験問題を大量に蓄積したデータベースから複数レベルの問題のセットを構築して受験できる仕組みを目指すという主旨の記述があり、大学入試センターがそのようなシステムを構築するものだと、私は勝手に思い込んでいた。

しかし2017年7月13日の「高大接続改革の実施方針等の策定について」ではたしかに民間の試験を認定するとある。そこで大きく方針が変わっていたのだが、「大学入学共通テスト」にばかり注目が集まり、「高校生のための学びの基礎診断」について大きく報道されることはなかった。

さらにさかのぼれば、2013年10月31日、自民党政権下の教育再生実行会議が出した「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について(第四次提言)」に書かれた「達成度テスト」の要件とも結果的にたしかに一致する。すなわち、年間複数回実施し、しかも1点刻みではなく段階別の結果を出し、外部検定試験の活用も検討するということである。

「高校生のための学びの基礎診断」を参考にしながらPDCAサイクル(計画・実行・点検・改善)を回し、高等学校教育改革を行おうというのがもともとの話である。大学入試への活用も示唆されている。それを、複数の民間業者のありあわせの試験・検定ですませてよいのだろうか。

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民間の試験・検定対策問題集を解くことが、これからの高校生の学習スタイルの主流となってしまうのかもしれない。いまは「大学入学共通テスト」の話題でもちきりだが、いずれ批判の矛先は「高校生のための学びの基礎診断」にも向かうだろう。

それにしても、「大学入学共通テスト」と「高校生のための学びの基礎診断」の実施方針をあわせて見ると、強い批判を受ける矢面に立ちながらも「第四次提言」で示された各方針を部分的にでも実現することで政権の面目を保とうとする役人のけなげさを感じずにはいられない。

これから中学受験を志す親子は、多かれ少なかれ上記のような混乱の影響を受ける心構えが必要になるだろう。悪影響を最小限にとどめるには、大学入試改革に振り回されるのではなく、教育に対する自分たちの軸をもち、それを貫くことである。

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