開業目前、「相鉄・JR直通」ダイヤ作成の舞台裏 11月末開業、海老名―新宿で試運転が佳境に

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その対処法の1つとして、湘南新宿ライン開設当時から採られているのが、最大のボトルネックである蛇窪の分岐点において同ルートの上下列車同士(横須賀線同士、湘南新宿ライン同士)をすれ違わせる、という考えである。

地上設備の面では乗り心地改善のために軌道強化を行ったほか、変電所容量を増強し、東海道貨物線・横須賀線において運転本数の許容量を高めるため信号機を増設して閉塞数を増やした。また、信号機のLED化等の信号設備強化も行った。

加えて、一部区間ではJR東日本が首都圏に幅広く取り入れている「ATS-Pの現示アップ機能」を活用している。この現示アップ機能とは、列車の種別を選別して列車のブレーキ性能に応じた信号を現示することで運転時隔の短縮を図る仕組みである。

これらの対策を施したことによりJR線における相鉄・JR直通電車は、ほぼすべて純増として盛り込まれた。他の列車の減少は、ただ1本、朝ラッシュ時の「湘南ライナー10号」が8号に統合されたのみである。

考慮すべき武蔵小杉駅の乗り換え

一方、武蔵小杉駅も考慮しなければならない要所とされた。相鉄からの直通電車利用は、狙いの渋谷・新宿方面だけでなく、東京方面や総武線へ向かう利用者も横浜での距離と上下移動を伴う乗り換えを避け、同じホームで楽に乗り継げる武蔵小杉に移ると考えられている。大荷物を携えた成田エクスプレス利用者もいる。

そこでラッシュ時は、新宿方面行きを2本立て続けにしないダイヤを組んだ。連続すると、今でも利用が多い東京方面の乗客がホームに滞留してしまい混雑に拍車がかかってしまうからだ。

『鉄道ジャーナル』2019年12月号(10月21日発売)。特集は「相互直通運転」(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

同駅は、昨今の混雑に対応して昨年4月に臨時口の新南改札とエスカレーターを設置、横須賀線ホームから東急が交差する北改札への通路も兼ねる南武線ホームの一部拡幅も完了させた。続けて抜本策にも取り組んでおり、2023年度に供用開始の予定で横須賀線に下り専用ホームを増設して2面2線化を図り、そのあと新規改札を設けて東急からの駅外歩行者動線を2ルートに増やす。また、これまでのグリーン車付き15両編成列車の中に10両編成普通車のみの列車が混じることになるため、放送等の案内を強化し、横須賀線電車には次駅の西大井でも乗り換えられることを伝えて、誘導を図るとしている。

直通運転区間は海老名―新宿間とされた中で、その基本を越えて赤羽や大宮方面まで走る列車があるのも、JR線内の要因である。現在のダイヤを見ると、埼京線には新宿―赤羽・武蔵浦和・大宮間などの区間列車も数多くある。相鉄・JR直通列車をそれらと結べば、新宿駅で双方に折り返す手数は大幅に減ることになるが、その分、相鉄12000系がJR線の奥深く入り込み、元来の東京都心直通という事業の目的を逸脱する。

そこで相鉄からの直通区間は新宿までと明確に線引きされたが、朝ラッシュ時は新宿駅ホームに折り返しのため一定時間、停車させておける余裕はもはやない。そのため6往復だけ、新宿以北に延ばすこととなった。現行ダイヤと見比べると、おおむね新宿以北の列車のダイヤにつながっている様子が読み取れる。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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