災害復旧作業に潜む「意外な健康リスク」の正体

軽装での災害ボランティアはお勧めできない

台風19号による阿武隈川の氾濫で被害を受けた民家の後片付けをする高校生ボランティア(写真:時事通信)
台風19号の通過から1週間が経過し、被災地の復旧作業も徐々に進みつつある。こうした状況の中、ワールドカップラグビーで来日した各国の選手がボランティアで片づけを手伝う姿が報道され、温かい気持ちになった読者も多いだろう。
だが、その活動には危険が背中合わせであることをご存知だろうか。
災害後の復旧作業に潜む「健康リスク」とは何なのだろうか。国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長に聞いた。

長袖シャツと長ズボン、ゴム手袋の着用を

――ラグビー選手が、サンダル履きで半そでのシャツ、半ズボン姿で災害ボランティアに参加していました。医学的に問題はないのでしょうか。

彼らの行動には心から敬意を表したいと思います。ひとりの日本人としてありがたいことだと感じました。

ただ、今後への教訓として知っておいていただきたいことがあります。軽装での災害復旧支援作業は、感染症予防の観点からは決してお勧めできないということです。長袖シャツと長ズボン、ゴム手袋を着用し、水が入らず釘などを踏んでも踏み抜かないような底の厚いしっかりした靴をはいて自分の身を守ることが大切です。

大曲貴夫(おおまがり・のりお)/1971年生まれ、佐賀医科大学医学部卒。医学博士。聖路加国際病院、テキサス大学ヒューストン校などを経て、2012年に国立国際医療研究センター・国際感染症センター長(記者撮影)

――災害支援ではどんな危険があるのでしょうか。

ケガそのものに加えて、ケガによる感染症があります。なかでも破傷風には気をつけなければならない。

初期の破傷風は口が開けにくくなり、筋肉が突っ張る感じがするといった程度の症状ですが、重症化すると全身の筋肉が緊張、痙攣を起こします。こうなると集中治療室で人工呼吸器をつけなければならなくなります。抗血清剤の投与で回復に向かいますが、完治には2~3週間はかかります。手遅れになれば亡くなることもあります。

破傷風菌は嫌気性菌で通常は土の中にいます。ところが洪水などで土砂が削られ流れてくると、地表面に出てきます。小さな傷口から体の中に入り込み、膿などの中で空気に触れない状態で増えます。傷口は小さくても深い傷で感染、発症しやすいといわれています。が、浅い傷であっても発症に至る可能性はあります。

ただ、破傷風だという診断は案外難しい。感染からおおむね3日~3週間で発症しますので、短期間で発症する場合はともかく、3週間も経ってからでは中々わからない。潜伏期間には症状がほとんどないので医師も患者さんもピンと来ないことが多い。破傷風と診断するには、いつ頃こんな野外活動をした、などという患者さんの情報も必要です。

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