男の子に「男らしさ」を求める子育ての弊害 弱肉強食ではなく、共存共栄の時代だ

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──AI時代、どう立ち向かう?

今の子どもたちはネット上の、その場限りのフロー情報に慣れすぎてしまった。清涼飲料水のガブ飲みみたいなもので、硬い物をそしゃくする力が弱く、“知的栄養失調”に陥るのも時間の問題です。思想や世界観が練り込まれた文章を読解し、自分なりの批判をする力が必要。1つの事案について、こういう見方もできる、ああいう見方もできる、自分はこの視点が大事だと思う、と選択できることが、生きるうえですごく重要なスキルになると思うんです。

そして感性を育んでほしい。論理的な正解はAIが求めてくれるでしょう。でもそれが大間違いであることは多々あると思う。なぜなら論理とは言語化されたものしか勘案できないから。世の中には言語化できないものがその何百倍もあって、それを勘案して判断できるのが感性。AIが論理的な限界を感じたその先、AIにできない部分が感性の領域。それが思いのほか大きく、人間の感性が求められるようになると思います。

子どもにも「いいね!」してあげる

──そこで親にできることは?

文字どおり、子どもを見てあげること。幼少期なら、公園でその子が自分にとってステキなものを発見したときの、「やった!」という一瞬の表情の輝きを見逃さないでほしい。「ねえ、こんなの見つけたよ」には同じ表情で「おお!」とフィードバックしてあげる。そうやってちゃんと返してあげると、子どもは自分の感じてることに自信が持てて、さらに知的好奇心も高まる。遊ばせながら、SNSに「いいね!」するんじゃなくて、子どもにいいね!してあげる。

おおたとしまさ/1973年生まれ。東京外国語大学英米語学科中退、上智大学外国語学部英語学科卒業。2005年にリクルートから独立後、数々の育児誌・教育誌編集に関わる。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許を持ち、小学校教員の経験も。著書50冊以上。(撮影:今井康一)

思春期も一緒ですよ。普段「うるせぇ」とか言いながら自分の部屋にスッと入っていくのに、なぜかリビングに長居してる。そこで「今日のサッカーの試合どうだった?」と言った瞬間、よくぞ聞いてくれた、みたいに「ハットトリックしちゃってさ」とか。そしたら「おお、すげぇじゃん」と返す。君のこと見てるよというサインを送ってあげれば、子どもは勇気づけられ、あとは勝手に成長していく。子どもが親に見ていてほしい瞬間って、あるはずなんです。

──今や普通名詞化した“グローバル人材”は「経済界が喧伝する幻想」とバッサリ。来年、小学3年生から英語が必修化されます。

英語ができる人が必要だという昭和の企業、偉い人たちの思いに偏ってる。話せるようにする“習得”ばかりで、論理的に学習することがおろそかになっている。

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