やりたいことがわかると頑張って実行できるタイプだと自認する隆之さん。そのときは明確だった。とにかく恵美子さんと一緒にいたい。食事などに誘い、帰る時間までに「オレでよければ」と次に会う予定を設定した。
「断られるまで続けるつもりでした。週に2回ぐらいは会っていたと思います」
無人島で1日中一緒に過ごすこともあり、関係性が「グラデーション」で盛り上がっていったと語る隆之さん。一方の恵美子さんは隆之さんから明確な言葉がないので、「そういうのではない」と思っていたらしい。独身の男女が週に2回も2人きりで会うことが続いて、ほかにどういう関係があるというのか。恵美子さんも少し不思議なところがある女性なのかもしれない。
結婚の決め手は「彼の母親からの一言」
昨年の夏からは隆之さんは恵美子さんと同じシェアハウスに住み始めた。ゆるい同棲状態が続いていたが、今年の5月に2人で隆之さんの実家に遊びに行った際、今までは何も干渉しなかった70歳の母親から隆之さんは強い言葉をかけられた。
「お前たちは何年付き合っているのか。お前は不器用だから何をすればいいのかわからんのだろ。恵美子さんとのことをそのままにしておくな。まずは籍を入れろ」
素直にハイと答えた隆之さん。恵美子さんは「あ、そうなんだー。私たち結婚するんだ」とぼんやり感じた。それがプロポーズとなった。ただし、結婚に関する予兆はあったと恵美子さんは笑いながら教えてくれた。
何事も勉強したいタイプの隆之さんは、男女交際から結婚に至るまでの情報を集めていたのだ。『結婚と婚活に関するデータブック』で数字を把握し、本連載でケーススタディーを研究。「性的な興味を回復する方法」も読んだと真顔で話す隆之さん。その揚げ句が母親に背中を押されてのプロポーズだ。いったい何のための勉強だったのか。
「そのときの私は結婚願望ではなく、結婚について勉強したい願望が高まっていたのです」
やはり変人である。そんな隆之さんの様子を恵美子さんは面白く観察していたらしい。似た者夫婦と言える。
結婚後、隆之さんの人生に大きな変化が訪れた。コミュニケーションというものを実地で学ぶことができているからだ。
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