台風19号で経済活動に生じた影響に見た「教訓」 物流、働き方、サプライチェーンなど多方面に
その意味で、台風上陸時に社員の出社を強制した会社がほんとうにあったとしたら、その希少性ゆえに注目されているとすら思っていいかもしれない。
災害にたいする意識の高まりからか、不夜城と思われていたコンビニエンスストア各店舗であっても前述の通り、休業を決断したほどだった。
私は、企業のサプライチェーンにかかわるコンサルティングに従業している。原稿執筆時点(2019年10月15日)では、影響は調査中とする企業が多かった。台風19号の上陸が3連休中だったこともあり、出社してすぐに取引先の状況を確認している状態だ。
パナソニック郡山工場などが浸水被害
現時点では、甚大な影響は確認できないものの、北関東の一部工場で、浸水してしまったために生産の見通しが立っていない例が散見された。福島県にある郡山中央工業団地のパナソニック郡山工場など、周辺の工場は浸水の被害を被った。現在は、保有在庫で対応しているものの、生産再開時期が見通せない工場もあるようだ。
企業のサプライチェーンにおいては、直接取引先だけではなく、その下請け、孫請けまでを含めると膨大な数になる。かねて、自社のサプライチェーン全体に分散する企業を把握しようとする試みが続けられていたが、ほとんどの企業は全容をリスト化するにいたっていない。さらに、リスト化したとしても、その数が膨大なため調査が困難をきわめる。
実際は、直接取引先に連絡し、下請けに影響がないかを確認する。さらに下請けは孫請け企業に影響がないかを確認する。伝言ゲームが無数に繰り返され、なんとか様子がつかめてくる。
2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震を例にとるまでもなく、震災地から遠く離れた地にも生産の影響が出る。遠くの町工場で生産している部材ひとつが供給できなかったために、生産が止まってしまう例は枚挙にいとまがない。
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