ルンバの半額!「中国IoT家電」急成長のワケ シャオミが掃除・炊飯の常識を変える

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冒頭のIoT炊飯器は、米のパッケージに記載されたバーコードをスマホアプリで読み取るだけで、品種やブランドなどに応じて最適な加熱方法を選べる。ユーザーの好みに合わせて炊き上がりの硬さを調整できるほか、スマホで遠隔操作すれば、自宅に帰るやいなや炊きたての白米にありつけるのだ。

一見すると「ルンバ」のような、シャオミの掃除ロボット(編集部撮影)

シャオミの掃除ロボットは一見すると、イギリスiRobot社の「ルンバ」のようだ。多くのセンサーがついており、自宅の構造を正確に把握してスマホアプリ上にマップを表示。ユーザーが指定した部分だけを掃除する。稼働中にバッテリー残量が20%を下回ると自動で充電器まで戻る。バッテリーが80%まで回復すると、先ほどの地点に戻って稼働し続ける。稼働状況はアプリ上でリアルタイムに確認でき、外出中に充電や稼働を指示することもできる。

掃除ロボットの価格は1499元(約2.2万円)。iRobot社のルンバの中で、アプリでの操作に対応する機種として最も安価なものが5万円以上であることを考えると、シャオミ製品は非常に手頃であるといえる。炊飯器も最高級モデルのIH圧力炊飯器で1099元(約1.6万円)。廉価版はたったの199元(約3000円)だ。技術力は高いが知名度の低いベンチャーメーカーを多く囲い込むことで、圧倒的な低価格を実現。さらに、ECや広告など収益性の高いインターネット事業で全体の利益を下支えする構造だ。

AIの名は「シャオアイトンシュエ」

こうした最先端のIoT家電の屋台骨となっているのが、自社開発のAI「小愛同学(シャオアイトンシュエ)」である。デバイスを直接操作したり、スマホアプリで指示したりせずとも、AIスマートスピーカーに話しかけるだけで、あらゆるIoT家電を自在に動かせる。2019年度上半期の小愛同学の月間アクティブユーザーは、前年同期比88.3%増の4990万人に達した。

8月末、シャオミは中国の科学技術部によって、IoT家電に関するAI開発の重点育成企業に選出された。重点企業にはほかにも、中国ITを代表するBAT(バイドゥ、アリババグループ、テンセント)や通信機器最大手のファーウェイらが選ばれている。シャオミのIoT家電は今後、政府による補助金など全面的なバックアップの下、”国策事業”としてさらなる成長が見込まれる。

世界シェア2位のファーウェイを筆頭に、OPPOやVivo、トランシオンなど多くの中国メーカーが台頭する中、シャオミの祖業であるスマホ事業は前途洋々とはいえない。だが、彼らのIoT家電プラットフォーマーへの進化は着実に進んでいる。
 

王 沁 華和結ホールディングス CEO

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オウ シン / Alex Wang

中国陝西省漢中市出身。2010年に来日し、慶應義塾大学商学部に入学。在学中にコンテンツ商社「JCCD.com」などを運営する華和結ホールディングスを設立。
大学卒業後、同社を経営しながらリクルートホールディングスに入社。数多くのメインブランドのCRM、企画運営、中華圏企業との提携交渉、投資検討などを経て、プロダクト統括本部・新規事業統括に配属される。
2021年にリクルートを退社。現在は、華和結ホールディングスCEOとして、「JCCD.com」の他、AI・人工知能プラットフォームの「AiBank.jp」、グローバルタイムシェアプラットフォーム「Time-X」など複数の事業を経営し、自身の会社でアプリ開発も行っている。

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