「会計に無知」な経済学の大家が断罪される理由

アダム・スミス、マルクス、ケインズをも批判

会計には、為政者の権力を抑制する力があるという。会計の本来の役割を歴史からひも解いていく(写真:Jirapong Manustrong/iStock)  
「会って計る」。これが会計の本来の意味ではないか。古今東西4000年の会計の歴史を長年にわたって研究してきた吉田寛氏は、上梓された近著『市場と会計』で「会って計る」という会計の意味を人間行為の視点から解き明かしています。
会計の歴史をひも解く本がこの間数多く刊行されているなかで、「東洋の会計の歴史と理解が本書には織り込まれている点が類書と異なる」と指摘する箱田順哉氏が、本書のポイントを読み解きます。

会計は人間の行為

中国紹興市に会稽山(かいけいざん)という山があります。紹興酒の銘酒「会稽山」を知っている人も多いでしょう。

会稽山の麓に秦(紀元前778~206年)の始皇帝が建てた石碑があります。人と会ってその人の功績を計ることに長けていたという夏王朝(紀元前2200~1700年頃)の始祖である禹(う)を祭って建てられた石碑です。

孔子は『論語』で「禹の治世には非の打ち所がない」と言っています。今日の日本の「会計」のルーツを4000年前の中国に見いだすことができます。

市場と会計』の著者、吉田寛氏は「会計する」という表現をよく使います。面白い言い方です。

吉田氏いわく、会計は物の効用を計る、人の功績を計るといった人間の行為です。お店では、品物を求める人が品物を手に取り値札と見比べながらその効用を計っています。品物を手に取ることができないネット販売では、効用を訴えるためにあらゆる工夫をしています。消費者は知らずと「会計」しています。

会計は人間の行為であるということがわかれば、「会計する」を自然に受け入れることができます。会計は記録と計算であるという頸木(くびき)から解放されれば、誰もが日常的にしている会計の本質を理解して、やがて会計の力も知るようになるでしょう。

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