「会計に無知」な経済学の大家が断罪される理由

アダム・スミス、マルクス、ケインズをも批判

「記録と計算」の集大成である財務諸表が作られるようになり、同時に「経営者は怠慢であり浪費が常に幅を利かしている」というアダム・スミスの疑念を払拭するために、公証人や公認会計士の保証も行われるようになりました。

アダム・スミスが明らかにした分業の成果によって経済は大きく発展しました。その分業を支えたのが会計なのです。

ところで、アダム・スミス、マルクス、ケインズなど、誰もが知っている経済学の大家が「会計を知らなかった人たち」として吉田氏にバッサリと斬られています。伊藤博文にいたっては、「会計を抹殺した」と糾弾されています。

吉田氏が、これらの大家たちが会計を知らなかった、と批判するのには理由があります。会計が人間の行為であることについての洞察に欠けていたということです。伊藤博文に関しては、大日本帝国憲法草案から政府の会計責任を削除したことが後世に残る罪として断罪されています。

権力を抑える会計

ルネサンス時代、約束に基づく将来の行為が取引されるようになった結果、金融業も興隆し、イタリアのフィレンツェは中世ヨーロッパの金融業の中心になりました。しかし、銀行業等の幅広い事業を行っていたペルッツィ会社はイギリス国王エドワード3世に対する貸付金が回収できずに1343年に破産してしまいました。国王に踏み倒された最初の会社といわれています。

専制政体では主権と権力は専制君主にありました。専制君主は税金徴収も借金とその踏み倒しもほしいままにしていました。しかし、専制政体も市民の抵抗に遭って終わりを告げ、世界は民主化の道を歩み始めます。

1689年にイギリスでは、名誉革命により権利章典 (Bill of Rights) が定められました。国王が課税により、あるいは借り入れにより金銭を徴収するには、「議会の同意」を得ることが求められるようになったのです。

1776年7月4日に発せられたアメリカの独立宣言では、当時植民地アメリカの代表をイギリス議会に送ることが許されていなかった状況について「われわれの同意なしに課税する法律をイギリス国王は承認した」と糾弾し、「代表なくして課税なし」と宣言しました。

1789年のフランス革命では、人権宣言で「税の負担には人民の承諾が必要だ」と、税を払う要件として納税者の承諾が必要なことを明らかにしました。

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