厚生労働省に重要事実「隠ぺい」の疑惑 白血病薬臨床研究で新たなスキャンダルに発展も

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臨床研究を所管する医政局研究開発振興課の担当者に毎日新聞報道の事実関係を確認したところ、「(すべての患者アンケートコピーを渡していたという)事実があるかどうかの詳細は把握していない」と回答した。「医薬品・医療機器産業の振興」を所管する医政局経済課の担当者も、「東大病院とノバルティスの間で説明内容に食い違いがある」ことを理由に、「確定した事実はわからない」などと答えている。

ところが実際には10日付けの厚労省作成文書から明白なように、東大病院が患者へのアンケートをノバルティスのMRに渡していたことを厚労省はすでに把握していた。当然、厚労省側はこの行為が不正行為に当たることを認識している、同じ文書の中で「東大に対しては、『臨床研究に関する倫理指針』違反の観点からも調査・報告するよう指示した」との記述があることからも、それは明らかだ。

厚労省はノバルティスおよび東大病院に「早急なる調査実施」を指示する一方、両者から重要な情報を得ておきながら、開示しないままにしている。その一方で、2月10日付け文書では、「リスクヘッジの観点から」として、「ノ社、東大に対し、マスコミからの接触や、新たな事実発覚があった場合、速やかに厚労省に報告するよう要請済み」との記述もある。

「医師は自ら真相を開示すべき」

「リスクヘッジの観点から」の意味について問うと、前出の研究開発振興課の担当者は、「両者が自らのリスクをヘッジをするために、という意味」と答えた。しかし、文章の前後関係からみて、「監督官庁として、両者から重要な報告が上がってこないリスクを回避するため」、あるいは「両者と厚労省の説明に食い違いが生じないようにするため」と読むのが自然だろう。

臨床研究の不正問題に詳しい上昌広・東京大学医科学研究所特任教授は、「東大病院など臨床研究に関与した医療機関の医師は自らの責任で真相を明らかにすべきだ。さもなければ関係者の間で隠ぺい工作が行われていると国民に思われても仕方がない」と警鐘を鳴らしている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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