内閣府は公的機関によって整備される社会資本ストックのうち、主要な18部門について1960年代以降の長期的な推計を行っている。これによれば実質で投資額が最大だったのは1990年代半ばで、現在の投資額は1980年代頃をも下回る。その結果、物理的な減耗や陳腐化など供用年数の経過に応じた減価を考慮した実質的なストック金額(実質純ストック)は2000年代初頭からほぼ横ばいとなっている。
身の回りでは相変わらず新しい道路の建設や公共施設などの整備が行われているように見える。それなのに、実質純ストックは伸びが止まって横ばいとなっており、前述のように、GDP統計では政府部門の総固定資本形成に固定資本減耗の水準が近付いている。これをどう理解すればよいのだろうか。
これは会計上は固定資本減耗という費用が発生しているものの、単なる帳簿上の数字に過ぎず、現実に施設を最新に保つような大工事は行われておらず支出もないからだ。
政府部門の固定資本減耗は総固定資本形成の9割程度に達しているが、実際には資金の多くは更新工事ではなく、新しい社会資本の建設に使われている。
老朽設備の更新は新規建設よりもお金がかかる
施設の更新に使われなかった資金は将来の大規模な更新工事のために積み立てられているわけではないので、将来大規模な更新工事が必要となればその時点で税や国債の発行によって資金を調達する必要が出てくる。
国土交通省は、今後の社会資本ストックの維持・更新費用の増加は避けられないが、「事後保全」から「予防保全」へ切り替えることによる費用の縮減効果は大きいとしている。予防保全を行うことによって、維持・更新費用(国土交通省所管分)を2018年度の約5.2兆円から2048年度で約5.9~6.5兆円(2018年度比で1.3倍)に抑制できると見込む。だが、抑制に成功したとしても、かなりの増加であることは否定できない。
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